1日6時間の睡眠時間では足りないのか。生命科学者で大阪大学栄誉教授の吉森保さんは「6時間の睡眠で足りる人は少数だ。脳の機能は明らかに低下するうえ、中長期の睡眠不足は寿命に直結する」という――。
※本稿は、吉森保『私たちは意外に近いうちに老いなくなる』(日経BP)の一部を再編集したものです。
人間は睡眠が不足すると老化が加速する
「仕事で頭を使いすぎたから寝てリフレッシュしよう」と思ったことは誰もがあるでしょう。
確かに寝るとスッキリするのは事実です。
ただ、多くの人が誤解していることがあります。
寝ているときも脳は動き続けています。活動をとめることはありません。場合によっては起きているときよりも脳が活発に動いていることすらあります。
「えっ、睡眠って休むためではないの?」と思われたかもしれません。
たしかに「眠る=休養をとる」イメージはありますね。実際、眠ることによって体は休息します。また、成長ホルモンも分泌します。
ここで、ひとつ大切なことをお伝えします。
それは、「なぜ、人間は眠るかはまだわかっていない」ということです。これは、生命科学の最大のなぞといっても言い過ぎではありません。
ただ、近年になり、明らかになっていることも多くあります。
動物は眠らなければ死にます。そして、人間は睡眠が不足すると老化が加速します。
老化は病気になりやすくなることですから、結果的に死ぬ確率は上がります。
いかに老化に睡眠が関係あるかがわかるでしょう。
イカもタコもクラゲも眠る
犬や猫や魚など、脊椎動物はすべて寝ます。あるいは、脊椎動物ではありませんが、昆虫も寝ますし、軟体動物のイカやタコも眠ります。
眠る生き物の条件とは、何だと思いますか?
ここまで見ると、脳があるのが眠る条件のように思われるかもしれませんが、最近の研究では脳がないクラゲも眠ることがわかってきています。
それだけ眠ることは動物にとって根源的なんですね。
「クラゲが眠るなんて、どうやって調べているのか」と疑問に思われるかもしれません。
そもそも、生命科学の世界では眠るという行為はしっかりと定義づけられています。

