※本稿は、ベンジャミン・ハーディ『全力化』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
他人から見た「あなた」の印象を決定づける要素
心理学者たちは長い間、心と体には一方通行の関係しかないと考えていた。「心が向かうところに体がついていく」と考えていたのだ。
しかし最近の研究により、その関係は双方向のものだということがわかってきた。そう、心が体に影響を与えられるのと同じように、体もまた心に影響を与えられるし、指示することもできるのだ。
心理学者ダン・アリエリーの研究を考えてみよう。
アリエリーは著書『ずる――噓とごまかしの行動経済学』(早川書房)の中で、「自己シグナリング」というコンセプトについて説明している。
私たち人間は、「自分が思っているほど自分をよくわかっていない」という概念だ。
実際に私たちは、自分や自分の性格を、他の人が私たちを判断するのと同じように判断する。
つまりアリエリーがいうところの、「自分が何者か、どんな人物かは、自分の行動から推測するしかない」のだ。
あなたの人となりが、あなたの行動を決めているのではない。
それどころか、あなたの行動があなたの人となりを決めているのだ。あなたはある行動を取ると、その行動をもとに、自分自身を判断する。
つまり、単に行動を変えることで、自分のアイデンティティをすばやく変えることができる。
「自分で自分の機嫌を取る」がいい
自分の心理に明らかに影響するとわかっている行動を意図的に取ることは、心理学者の間で「予知」[訳注:pre-cognitionで、「事前の認知」という意味]と呼ばれている。
非常にシンプルな話で、特定の行動を活用することで意図的に、心の中で何かを引き起こしたり、操ったり、予期したりできるということだ。
たとえばモチベーションを感じたいなら、数秒間両手を思い切り叩いたり、家の周りを全力でダッシュしたり、冷たいシャワーを浴びたりすればいい。
誰かをデートに誘えば、その結果がどうであれ、「自分はリスクを恐れない人間だ」と感じることができるだろう。
このようにして起きた心理的な変化はその後、将来的に何かを決める際の決断にも影響を与えることになる。
心と体が双方向の関係であるように、自分と環境もまた、双方向の関係だ。
人は主に、環境が「トリガー」(誘因)となって、ある心理状態になったり、感情を抱いたりする。
そのため、特定の環境にいるときや特定の人のそばにいるときに、自分がどんな感情を抱くことになるか、予期することができる。
たとえば私の場合、それまでに行ったことがなかったような新しくて興味深い場所で、すばらしい人たちに囲まれていると、刺激を受けてモチベーションが高まる。
スピリチュアルな場所にいると、自然と物思いにふけるし、謙虚な気持ちになることも多い。
予知とはつまり、現在の環境を形作っていくことで、将来の自分の心理状態を予測したり、作り出したりできることの証明なのだ。

