若手社員にはどのように接すればいいのか。プロコーチの安達由紀代さんは「声かけを見直したほうがいい。何気ない一言や、善意の声かけが、若手のやる気を削いだり、心理的な負荷になったりしていることは多い」という――。

※本稿は、安達由紀代『困った部下は声かけで変わる そのまま使えるフレーズ70』(現代書林)の一部を再編集したものです。

会話する上司と部下
写真=iStock.com/kazuma seki
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クレーマーに悩む人にかけるべき一言

【残念な声かけ】
クレーム対応は誰でも大変だよね

クレーム対応をしている場面で、いつも焦ってしまい、うまく対処できていない部下に対し、上司としてあなたが「少しでも気持ちを楽にしてあげたい」「励ましたい」と思うのは自然なことです。

しかし、この残念な声かけは、一見、共感を示しているように聞こえますが、「大変なものだから仕方がない」という認識を部下に与える可能性があります。

このような言葉は具体的な対処法を示していないため、部下の不安を軽減することにはつながりません。次にまたクレームが来ても、冷静に対応することはできないでしょう。

上司が寄り添う姿勢を示すことは重要です。しかし、苦労を認めるだけでは、部下が「どう対応すればよいか」がわからずに戸惑うだけです。

さらにひどいクレームがあった場合、部下が自信を失い、最悪の場合は休職につながる可能性すらあります。

まず大切なのは、クレーム対応では冷静さが重要だと伝えることです。さらに、そのための方法を一緒に考えることです。

「冷静に対応するコツを一緒に考えませんか」と声かけすることで、部下は「自分だけで悩まなくてよい」という安心感を得られるでしょう。さらに、実践的な解決策を学ぶ機会が得られます。

こうしたやり取りを通じて、部下との信頼関係も強化されるはずです。

いざというとき、クレーム対応を共に考えてくれる上司の存在は心強いです。部下のモチベーションを高め、前向きに問題へ取り組む姿勢を育むでしょう。

【理想の声かけ】
クレームは感情的になることもありますよね。
冷静に対応するコツを一緒に考えませんか

自分の頭で考えない困った部下には…

【残念な声かけ】
考えすぎずに、まずは行動してみてはどうですか

上司や同僚に頼りがちな部下で、周りの人の時間を浪費している場合、「まずは行動しましょう」と促すのは十分ではありません。

部下が「深く考える必要がない」と誤解する可能性があります。行動意欲を削ぐ結果になりかねません。また具体的な指針がないと、「どう進めたらいいかわからない」と混乱するだけです。

部下の中には、「聞けば教えてもらえる」と思い込み、思考をとめてしまっているケースもあります。結果として、頼られているメンバーは余計な時間をとられ、チーム全体のパフォーマンスが下がっているかもしれません。

上司として重要なのは、部下が自律的に成長できる土台をつくることです。

「自分で考え、情報を探す」というプロセスを後押ししてください。そして、部下1人では困難が生じたときには適切なサポートを提供するのです。このバランスが鍵となります。