※本稿は、阪本弘輝『真の敵は自分自身⁉ 悩みに効く西洋哲学入門』(大和出版)の一部を再編集したものです。
プラトンがたどり着いた「愛」の真理
恋愛の話だと実はプラトンに『饗宴』という本があって、愛の古典といえばまずこちらが挙げられます。
結論だけ超ざっくり言うと、まず相手の身体を愛し、その次に心を愛し、そして知識を愛し、最後には「美のイデア」へと至る。それが「愛」の真理だ!という本です。
多分意味不明でしょうし、結論にたどり着くまでが超絶面白い本なので実際に読んでほしいのですが、今ここで大事なのは「まず相手の身体を愛し」です。そう、この本は「性愛」、つまり古代ギリシア語でいう「エロス」に関する本なんです!
対等な関係性における愛
一方で弟子のアリストテレスが重視したのは、「フィリア」という別の「愛」でした。古代ギリシア語には「愛」を意味するいろんな単語があって、「エロス」が「性愛」だとすれば、「フィリア」は「友愛」とも訳されます。
「エロス」と違い、より対等な関係性における愛を指すんだそうです。
でもそんな「フィリア」にも3種類あるとアリストテレスは言います。
「有用さに基づいた愛」「快楽に基づいた愛」、そして「人間性に基づいた愛」です。
曰く、
(『ニコマコス倫理学・下』アリストテレス著・渡辺邦夫訳・立花幸司訳/光文社 ※以下、『ニコマコス倫理学・下』)
部活の部長だったときは後輩が慕ってくれたり、会社のお偉いさんだった頃にはいろんな人から挨拶してもらえたり、地位や権力や名声に人が集まるのも、それはほかの人がそれを活用できて「有用」だったり「快楽」を味わえるからですよね?
そうしたポジションや力を失った瞬間から、少しずつ周りから人が減っていったという人は少なくないはずです。
恋愛でも、「都合のいい関係」というのはこういうものじゃないですかね?お互いに有用だったり快楽を求め合っているだけで人間性の尊重はありません。だから、長続きもしないわけです。
「でも、私はあの人が本当に大好きでずっと尽くしていて、プレゼントだって何度もあげてる! なのにどうして、私のことを大切にしてくれないんだろう?」
それは、むしろそのせいで、相手からは有用さと快楽に基づいた愛になってしまっているからです。
あまりにも辛辣ですが、アリストテレスはこう言っています。
というわけで、自分には素敵な友人や恋人がいないと感じるとき、まずは自分を振り返ってみる必要があると言えそうです。


