2メートルほど向こうに水道の蛇口があり水が少しずつ漏れて流れて来る。汚い地面に広がり近づいてくる。「あれがやってくるまでには立ち上がろう」と必死に考えた。

結局、浸される前に立って電車に乗ったが、この記憶は忘れられない。今でも夢に見る。自慢じゃないが(自慢にもならないが)泥酔の記憶は生涯これひとつだけである。“三十にしてベロベロ”だ。

「悲しい酒」は飲んではいけない

40代はよく飲んだ。鶏を焼くりっぱな屋台でレバーのあと、モツ焼き屋と勘ちがいして「子袋、ある?」と注文して主人にどやされたり、勘定を余計に払って大枚のチップと思われたり(ママがすてきに美しかった)小さな失敗はいろいろあったはずだ。