裏金問題で受けたダメージを忘れた自民党
2023年末に発覚した自民党派閥の政治資金パーティー券問題は、数億円規模の裏金が作られていた実態を明らかにし、国民の政治不信を決定的なものとした。検察の捜査で複数の議員や関係者らが起訴され、自民党は麻生派を除いて派閥解散という事態に追い込まれた。これを受け自民党は「解党的出直し」を誓ったはずだ。
だがここまでの候補者間の論戦ではそうした風潮はまったく認められない。そもそも「解党的出直し」というフレーズ自体、2009年に政権を明け渡した時など幾度も使われてきたお決まりの陳腐な言葉であった。
今回の自民党総裁選で問われているのは、総裁選候補者らが口にする人事刷新や世代交代といった前向きな話でも、「未来の話」などでもない。次々にネットの番組に出演し、人気インフルエンサーと共演したところで、かつての裏金問題が取り繕われることにならないし、なるべきでもない。
自民党は参院選総括の報告書でいったい何を述べたのか。
ここでいうところの「国民から突きつけられた『現状からの脱却』」の含意が「政治とカネ」にあることを、自民党とその支持層はひたすら無視し続けている。
「#変われ自民党」というフレーズの虚しさ
自民党に今求められているのは、「政治とカネ」の問題に正面から取り組む覚悟と、国民の信頼を回復する具体策を示せるか、という後ろ向きの反省だったはずだ。
そのような覚悟がなければ、いくら「#変われ自民党」(総裁選の公式キャッチフレーズ)などと叫んでも、国民にはただただ空虚に響き、他人事に聞こえるだけである。直近の大型選挙3連敗という結果を見てもそのことは明らかなはずだが、自民党は未だに学習できていないか、どうしても認めたくないようだ。
「党の一致団結」など、幅広い国民が今求めていることだろうか?
無党派層のみならず、自民党の支持率が低下している現状において、そんなことに関心が向いているとは考え難い。
「政治とカネ」の問題は日本政治の宿痾であり、「世代交代が最大の改革」などということはありえないはずだ。メディアも最近は「起きたこと」を伝えるのに手一杯で、追及の手は緩みがちだ。


