候補者は「石破氏に敗れた人たち」
9月22日、自民党総裁選が告示された。衆参で過半数割れという、いよいよ崖っぷちの自公政権をどう立て直すのか、自民党の命運をかけた熱い戦いが始まった。
と言いたいところだが、何とも代り映えのしない顔ぶれに新鮮味が感じられない。各候補の訴えも、自民党をどう再生するとか、日本経済を強くする、あるいは野党としっかり連携する等々、どうにも陳腐で惹きつけられるものがない。
考えてみれば、出馬した5人が全員去年の総裁選で石破茂首相に敗れた候補だ。少数与党で綱渡りの政権運営を続けた挙句、参院選でも過半数を失った石破首相が全責任を背負って退陣するのは仕方ないとしても、その石破氏よりもマシな政権運営ができると胸を張って言える候補がいるのだろうか。
自民党というコップのなかの争いなのだが、肝心のコップに大きくひびが入っている。あまり激しく争うと、コップが真っ二つに割れてしまいかねない。だから総裁選の熱気も感じられないのだ。
暗躍する「闇将軍」
参院選の後、石破首相辞めろ、辞めないの騒ぎから、ようやく総裁選の実施が決まり、ここまで2カ月月以上。ともかく総裁選は告示され、小林鷹之、茂木敏充、林芳正、高市早苗、そして小泉進次郎の5氏が正式に立候補した。
やや食傷気味ではあるが、情勢はどうだろうか。報道各社の各種の調査も出そろい、大方の関心は、知名度が高い高市氏と小泉氏のどちらが勝つのか、三番手の林氏が、これに絡むことがあるのかどうか、ということだろう。
各種の世論調査でも、「次の首相にふさわしい人」で常に高市、小泉の両氏がトップを競い合っている。22日発表の朝日新聞の調査では、全体では高市氏28%、小泉氏24%だったが、自民党支持層に限ると小泉氏が41%、高市氏は24%と逆転した。林氏は全体支持率9%、自民党支持層に限ると10%と小林氏、茂木氏の2人より上位に近づいている。
いずれにしても現時点では、高市、小泉両氏が先行し林氏がこれを追う構図だ。
「しかし、これでは当たり前すぎて面白くもないよね。前回は、トップを走る高市を最後に石破が大逆転した。そんなドラマがないとエネルギーも湧いてこない」
ある自民党の元衆院議員は、いかにもつまらなさそうな顔をして、そう言った。
そしてこうも続けた。
「総裁選は自民党のなかの闘いだ。その趨勢を決めるのは知名度ではない。やはり数の力、派閥の力なんだ。麻生派だけじゃない。旧岸田派は、いまも岸田が一声かければ40人は動かせる。菅のグループも結束が固い。石破は現職の首相で地方にも影響力を持っている。最後は、この4人が誰を推すかで決まるんだよ。その力を見せつけるのがキングメーカーだし、令和版闇将軍だ」

