「これで認知症を予防できる」などといった情報が社会に氾濫しているが、どこまで信用できるのだろうか。米マウントサイナイ医科大学病院の山田悠史医師は「世の中には、医学的根拠が乏しい“健康ビジネス”があふれている。脳トレやサプリメントが謳う効果については、疑ってかかるべきだ」という――。
介護施設でパズルを解く高齢者の手
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認知症ビジネスがはびこっている

これまで2回に分けて、認知症を防ぐ生活習慣についてエビデンスをもとにお話ししてきました。

今回は、「実は効果のない認知症予防」について、解説していきたいと思います。

ところで、「認知症予防」と聞いて、皆さんはなにを思い浮かべますか?

健康食品やサプリメント、脳トレ、高額な検査や自由診療……世の中には「これで認知症は防げる!」と謳うモノやサービスがあふれています。

日本では、65歳以上の4人に1人が何らかの認知障害を患っており、その数は今後も増え続けると予想されています。

多くの人が苦しみ、不安を抱く病気だからこそ、ビジネスになりやすいのです。

では、「本当に予防効果があるのか」というと、実は医学的根拠が充分ではないものが多く存在します。効果がないものに大切な時間とお金をつぎ込むのは、もったいない。それどころか、中にはかえって害になるものも存在します。

限られた時間とお金、そして何よりも健康を損なわないために、正しい情報を見極める視点を持つ必要があるのです。

認知症になる人 ならない人』(講談社)でも詳しく解説していますが、本稿では、手軽だからこそ、多くの人が手を出してしまいがちな2つの項目に絞って、解説していこうと思います。

“サプリメント”の本当の怖さ

まずは、「サプリメント」についてです。

テレビやインターネットでは「認知症を予防」「認知症に効果がある」などと謳った誇大広告が目につきます。

例えば、魚に多く含まれる脂の「オメガ3脂肪酸」をはじめ、腸内細菌である乳酸菌やビフィズス菌などを使った「プロバイオティクス」、ハーブのイチョウの葉から抽出した「イチョウ葉エキス」などが挙げられます。

いずれも認知症予防に有効であるとの研究はなく、サプリメントによる効果は十分確認されていないというのが実状なのです。

サプリメントは薬とちがって、あくまで食品です。臨床試験を行って、有効性や安全性が確認されているわけでもありません。

「薬のように品質管理がされていない」ということが重要で、米国ではサプリに不純物が混ざっているとの報告が頻繁に上げられています。

最近でも、依存性を持ちうるモルヒネの類似物質があるサプリに混入していたとの情報がありました。企業側は、顧客をビジネスに引き込むことが狙いですから、故意に不純物を混ぜているケースもあるでしょう。

一度飲んだら、ずっと飲みたいと思わせてしまえば儲かるからです。