認知症になる人と、ならない人
前回(「飲み会前にウコン」は逆効果…認知症専門医が解説「ビールは1日何本までセーフか」の最終結論)は、「認知症リスクを高める生活習慣」として、お酒が脳に与える影響について解説しました。
一方、認知症にならない人には特徴があります。筆頭に挙げられるのは「いくつになっても体を動かす」ことです。
患者さんの中には90歳、100歳になってもまったく認知症にならない方が大勢います。90歳になっても大学で教壇に立っている方もいれば、ボランティア活動に精を出している方もいます。
脳の働きがシャープで、健康を維持している理由を聞くと、ウォーキングや体操をして体を動かし続けていることがよかったと答える人が少なくありません。
運動が認知機能に有益であると考えられる理由は、運動により血液の循環が良くなって、脳の機能を改善することが挙げられます。
ただ、運動が認知症予防に確実に効果があるかというと、エビデンスで証明するのは難しいのです。
しかしながら、私が強調したいのは、運動には認知機能とは別のところでも多くの健康上の利点があるということです。
運動をすることで糖尿病などの生活習慣病、心臓病、がんなど多種多様の病気のリスクを低減することは多くの研究で示されています。筋力の増強や骨密度の維持、ストレス解消などの効果もあります。さらに、運動を通した人との交流は、認知機能の維持に役立つ可能性があり、間接的に認知症の予防にも寄与していると考えていいと思います。
一体どんな運動をすればいいのか
よく患者さんから「どんな運動をすればいいですか」と聞かれますが、自分の好きなもので、続けやすい運動を選ぶことが大事です。
ジョギングのような有酸素運動は記憶力や集中力を高めますし、筋トレは認知機能全般の維持に役立つともいわれています。米国では肥満の患者さんが多いので、膝に負担がかからない水泳やエアロバイクなどもすすめています。
このほか、テニスやヨガ、太極拳をみんなで集まって習いに行くと、人とのつながりもできます。楽しみながら体を動かすので、運動との相乗効果が期待できます。
何より、無理のない範囲で続けることが大事です。
もちろん毎日、運動できればいいですが、週3回あるいは週末に1回でも、まったくやらない人よりも健康維持のためにはずっとプラスになりますので、まずは習慣にしてほしいと思います。


