返戻率も、かんぽよりネット生保

郵便貯金(郵貯、ゆうちょ)は日本国民にもっとも親しまれているお金の預け先である。全銀行預金に占めるシェアは低下傾向にあるが、現在も2割以上と、2位以下に大差をつけている。

かつて郵貯のメリットといえば、一般の銀行の普通預金に比べて金利が高いことだったが、ゼロ金利が続く現在、メガバンクなどの普通預金金利とほとんど差はついていない。

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あなたの親も使える?「ニュー福祉定期貯金」とは

郵貯独自の有利な商品として「ニュー福祉定期貯金」がある。これは預入期間1年の定期貯金で、障害基礎年金・遺族基礎年金などの受給者、および公的年金受給資格を持たない1926年4月1日以前生まれの在日外国人であれば、1人あたり300万円を上限として、定期貯金の金利が0.25%上乗せされるというもの。一般の銀行の1年満期の定期預金の金利は0.2~0.3%しかなく、この上乗せ率は大きい。

この種の福祉型の定期預金は、かつてはさまざまな銀行が取り扱っていたが、いまも続くのはゆうちょ銀行だけである。「福祉」と名がつくので一般の人には縁遠いように思われがちだが、障害者のほか遺族年金受給者にも資格があり、意外と多くの人が対象になる。

郵貯の優位性の1つは、経営に対する安心感である。総資産額約196兆円と、他の国内金融機関に比べ圧倒的に規模が大きいこと、また「暗黙の政府保証」があるともいわれ、預金者の安心度は高い。それもあって、民営化した現在も最大で1000万円という預入額の制限がつけられている。

もう1つの優位性は、規模からくる利便性だ。銀行合併で支店やATM数が全体として減っているなか、日本郵政グループはユニバーサルサービスを義務付けられ、簡易郵便局を含めて全国に約2万4000局の郵便局舎と、2万6000台を超すATM網を維持している。またゆうちょ銀行は、ネット銀行を含む全国のほとんどの銀行とATMで提携しており、それらの銀行やコンビニエンスストアのATMで、ゆうちょ口座からの預金引き出しが可能である。

ただ、ATMの無料開放など銀行間の提携が進んでいるなかでは、その利便性にしても決定的なものとはいいにくい。