日本の新しい成長戦略は、何をめざすべきか

日本社会の実直な中間層である高卒者が地元に就職できれば、そうした社会問題の多くは解決するだろう。たとえば親世帯の近くに住めるので、共働きであっても保育所に頼らず子育てができる。自治体はその分、保育所不足に頭を悩ませる必要がなく、余分な予算を割かなくてよい。また、地方は全般的に生活コストが安いため、実際の年収よりも数段豊かな生活ができる。

私が考える「職場」とは、たとえば次のようなものだ。いま、日本企業の多くは海外工場で多くを生産し、海外市場に販売するグローバル企業に成長している。私はそういった企業に、海外の量産工場へ生産を移す前段階を受け持つ、100人規模のマザー工場をどんどんつくれと提言したい。マザー工場とは、研究所と工場の中間的な形態の工場である。

このプランの実効性を上げるには、震災後の復興論議とリンクさせることが大事で、税制や特区などの後押しでこうした「地方の職場」が増えれば、地方の経済環境は急速に好転するはずだ。

そして国全体では、「環境・省エネ産業」を育てることだ。地球環境を守ることは世界的なコンセンサスになっているが、これらの産業には、レベルの高い複合的な技術が必要になる。幸い、日本には土木技術、水のろ過技術など世界に誇れる高い技術力がたくさんあり、それらを単品ではなく、セット販売するのだ。さまざまな産業の組み合わせには、チーム力が必要だが、これは日本人の得意分野だ。自動車が世界一になれたのも、自動車は3万点の部品を組み立ててはじめて1台が完成するからだ。組み立てメーカーとコンポーネント・メーカー、コンポーネント・メーカーと部品メーカー間のチームワークが何より大切だからだ。

「世界で一番きれい好き」の日本人が、本気になって商品を開発すれば、そこから日本の新しい成長産業が生まれてくる。

以上は国や企業が取り組むべき政策的な対応である。一方、サラリーマン個人にもできることはある。