今年は激動の年になる――ここ数年、年の初めに繰り返し使われてきた言葉だ。厳しい表現ながらも今まではまだ、激動の向こうには希望があった。だが2013年の激動はどうも様相が違う。

作家の橘玲氏は「世界金融危機以降の欧米の姿を見れば先進国の成長が止まったのは明らか」と指摘する。欧米が過去に例を見ない金融緩和を行っても景気が回復しないのは「構造的な要因」としか説明できず、それは日本も例外ではない。

自民党の安倍晋三総裁は大規模な財政出動と大胆な金融緩和を約束したが「それが景気回復の逆転満塁ホームランになることは、たぶんない」(橘氏)。

なぜなら日本経済の屋台骨である製造業の成長が限界に達しているからで、巨額の赤字を垂れ流しているシャープやパナソニックと絶好調なサムスンやLGを比較すればわかるように、日本型モノづくりが韓国企業にキャッチアップされてしまったからだ。「韓国にできるなら当然中国にだってできるし、東南アジア諸国にもできる。インド、もしかしたらミャンマーででもできるかもしれない」(橘氏)。仮に韓国との競争に勝ったとしても、挑戦者は続々現れる。

自民党政権の公約である大胆な金融緩和が行われて円安が進行すれば、日本の製造業はひと息つけるという見方もあるが「多少の円安では製造業が復活することはない」と、橘氏はそれも否定する。

お金の専門家である本田健氏も同意見。

「世界的にビジネスモデルが変わってしまったのです」。その代表が価格破壊どころか、「無料」というビジネスモデルの出現。とりわけネットの世界では多くのものが無料で提供されている。ニュースも地図もスケジュール管理もデータ保存も無料――。

それは企業の収入源を断ち、息の根を止める。「突然降ってきた隕石に潰されるような形で産業が突然死することが起こるでしょうね」(本田氏)。国家も例外ではない。「外電が国家破綻を伝えて世界に激震が走るということが起こるかもしれない」(本田氏)。

加えて本田氏は「政治的な制裁は世界経済の破綻よりも怖い」と政治リスクの高まりを憂慮する。覇権主義の色彩を強めている中国。習近平体制の初年度となる13年も従来の強硬姿勢を踏襲し、領土問題がエスカレートすれば、日本企業に対して強烈な制裁を加えるだろう。