戸口も影響する中国の学歴闘争

このように、農民工は、都市において大きな待遇差があり、また、昇進にも壁があるなど、社会的な不平等問題の1つになっているのです。

世界の働き方研究所『労働時間を貯めて、休日に変える⁉ すごい 世界の働き方』(新星出版社)
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そんな中国は、学歴が個人のキャリアにおいて非常に重要な要素となる超学歴社会でもあり、「一流大学を卒業することが、理想的な就職先や高い報酬、安定したキャリアを実現するためには必須である」という意識が根強くあります。激しい競争を勝ち抜くため、子どもへの教育投資はとても盛んで、学歴を身につけるためにおしまずお金をかける両親なども少なくありません。

実際、多くの企業が採用の選考で「大卒」や「大学院卒」を応募条件としており、学歴は能力を証明する客観的な指標となっています。近年では、幹部候補の募集の際に「修士以上」とするケースもあり、入社後も職務内容、待遇、昇進において学歴が深く影響します。

また、欧米の有名な大学への留学経験もキャリアにおいて高く評価される傾向にあります。欧米ほどではありませんが日本も人気があり、多数の中国の学生が東京大学や早稲田大学へ留学しています。

人生を決める大学入試「高考」

中国で学歴を獲得するためにもっとも重要なのが「高考ガオカオ」と呼ばれる全国統一の大学入試です。イメージとしては、日本の「大学入学共通テスト」のような試験になります。一部の例外を除き、高考の点数のみによって大学入学の合否が決まるため、その結果は将来のキャリアに非常に大きな影響を与えます。

「現代の科挙」といわれる最重要試験「高考」
出典:世界の働き方研究所『労働時間を貯めて、休日に変える⁉ すごい 世界の働き方』(新星出版社)

高考は中国全土で同時に実施されますが、問題の難易度や合格ラインは、受験生の戸口が登録されている地域によって異なります。そのため、教育熱心な家庭では、少しでも有利な条件で受験するために戸口の移動を試みることもあるそうです。

都市部と農村部の教育格差の一因になっている戸口制度は、高考にも影響を与えています。非農村戸口のない農民工の子どもは、都市部の公立学校への入学が制限されたり、また、農村部は都市部と比べて教師の質や教材、受験対策などの教育リソースが充分でなかったりするなど、農村出身者は不利になりやすい面があるのです。

ちなみに農村の受験生が北京大学に合格した際には、「学校集合戸口」という一時的な戸口が与えられ、北京の学生寮などに住むことができます。

大学進学時の特別な戸口
出典:世界の働き方研究所『労働時間を貯めて、休日に変える⁉ すごい 世界の働き方』(新星出版社)