●欲がないこと(幸福の条件1)
最初に、第1の条件である「欲求を満たしやすい思考特性」に注目して、人物の具体像を考えてみよう。
こうした思考特性を持つ人とは、簡単にいえば、あまり欲のない人である。「毎日ご飯を食べられれば、それで満足」という人ならば、今の日本では、おそらく幸福を感じることもたやすいはずである。
ところで、ひと口に「欲がない」と言ったが、そのかたちは1つではなく、以下のようなバリエーションを想定することができる。(1)欲求の水準が低い(2)欲求の数が少ない(3)欲求の柔軟性が高い
(1)の「水準が低い」とは要するに高望みをしないということである。高い給料もいらないし、高級マンションに住めなくてもいい。身の丈にあった暮らしができれば十分に満足。そういう種類の「欲のなさ」である。
(2)の「数が少ない」とは、「あれもこれも」と欲しがるのではなく、「ただこれだけあればいい」と考えることをいう。学者さんなどがよく「生涯この研究ができれば、ほかには何もいらない」などと言うが、1つのものに心があり、結果としてほかのものに目がいかなくなるタイプの「欲のなさ」といえよう。
(3)の「柔軟性が高い」とは、こだわりがないということである。「これ以外はダメだ」と思っているより「だいたいこんな感じであればいい」と思っているほうが、満たされる可能性は格段に高くなる。物事を柔軟に考えることもまた「欲のなさ」であり、幸福を感じやすくさせるのである。
以上の3つが「欲のなさ」のバリエーションであるが、逆にいえば、こうした特性にあてはまらない人、つまり高望みをする人・あれもこれもと欲しがる人・こだわりの強い人などは、なかなか欲求が満たされにくく、幸福を感じにくい人ということになる。