(PIXTA=写真)

揉めごとに悩まされないためには、まずは怒りを生み出す脳の仕組み、カラクリに気づくこと。怒りとは所詮、天秤の不均衡に基づくものであると見抜きましょう。そうして怒りが自分自身に与えるダメージについて考えるようになれば、気の持ちようが変わります。

自分が人に何かをしてあげたとき、そこで天秤の均衡がとれるべき=感謝されるべきと思っていると、相手はかえって感謝したくなくなることも知っておくといいでしょう。人は恩着せがましい態度には無意識的に反発します。なかでも「あなたのためにしてあげた」というような「偽善」はとくに嫌うもの。

親が子どもに意見したりするときにも、よくこの「あなたのため」が使われますが、子どもの反抗を招くもとです。親は「あなたのため」と言いながら、自分でも気づかないうちに「子どもに自分の言うことを聞かせたい」「自分の思いどおりにしたい」という支配欲にとらわれていたりします。

子どもは敏感ですから、そうした偽善はすぐに見抜いて反発し、言うことを聞きません。子どもには、言葉を取り繕うのではなく正直に、たとえば「私はあなたにこうしてほしいと思っている」「こうしてくれないと、私がストレスを感じる」などと話したほうが通じやすいでしょう。これは相手が大人でも同じ。自分の本音をさらけ出したほうが、人との信頼関係を築きやすいものです。

ブッダの言葉

君を嫌っている敵が
君に対してする酷い仕打ち、
そんなものは
大したことじゃない。
君を憎む人が君に対してする
執拗な嫌がらせ、
そんなものは大したことじゃない。
怒りに歪んだ君の心は、
それよりもはるかに
酷いダメージを
君自身に与えるのだから。

(法句経42)*『超訳 ブッダの言葉』013

※記事中「ブッダの言葉」は、すべて小池龍之介編訳『超訳 ブッダの言葉』(ディスカヴァー刊)による。

月読寺住職・正現寺住職 小池龍之介
1978年生まれ。東京大学教養学部卒。2003年、ウェブサイト「家出空間」を開設。現在は「正現寺」と「月読寺」(東京・世田谷)を往復しながら、自身の修行と一般向けに瞑想指導を続けている。『考えない練習』など著書多数。
(構成=岩原和子 撮影=向井 渉 写真=PIXTA)
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