どんな老人が「愛される」のか?
それでは、どんな高齢者が「愛される老人」なのだろう。ある介護ヘルパーは語る。
「やっぱり、『ありがとう』と、きちんと口にされると嬉しいですね。本当に来てよかったと思います」
一方で、何人かの介護ヘルパーの口からは、「私たちは、介護のプロです。報酬をもらって、仕事としてやっている以上、満足のいただけるサービスを提供できたかどうかが大事であって、あえて利用者の方からの感謝は期待していません」という言葉が出てきた。
「よくも悪くも自己主張の強い方が、自分にとっての愛すべき人ですね。なんでも『ハイハイ、ありがとう』といった方が愛される高齢者と思われるかもしれませんが、介護は1対1の微妙なバランスの中で成り立つ仕事なので、しっかりと自己主張をしていただくことで、その人が何を望まれているのかはっきりとわかります。逆に、何が不満なのかもわかれば、やりがいも出てきますし、達成感もあります。当初はぎこちなかった関係でも、その積み重ねの中で、利用者の方に満足していただくことで、お互いの信頼関係が築かれ、心の通い合う瞬間も生まれるんです」
どうやら「愛される老人」というのは、介護ヘルパーの言うことに唯々諾々と従っている高齢者ではないようだ。しっかりと自己主張をしたうえで、介護する側と、納得がいくまできちんとコミュニケーションをとり、心を通い合わせることができる高齢者こそ、「愛される老人」といえそうだ。