「ドジャースハラスメント」という声も
しかし、今春は会見や練習のみで特集が組まれるなど、大谷をめぐる盛り上がりが増した感がある。これは「ハラスメントに近いものを感じる人が増えやすい」ということだろう。さらにネット上の声を見ていくと、なかには野球好きですら「大谷ハラスメント」を訴える人もいた。それどころか山本由伸に佐々木朗希も加わって「ドジャースハラスメントだ」なんて声もある。
対戦相手カブスの鈴木誠也や今永昇太が引き立て役のようなポジションにしか見えないほど、ドジャースびいきの空気が日本中にただよっている。事実、情報番組のアナウンサーやコメンテーターらも「今日はドジャーカラーの服を着てきました」などと肩入れするコメントが目立ち、まるでそれが日本の総意のように感じられてしまう。
ちなみにメジャーリーグのファンにしてみれば、豊富な資金力で他チームの主力を集めるドジャースは「本拠地ロサンゼルスの人以外“嫌”“苦手”という人が多い」と言われるチーム。かつて読売ジャイアンツは断トツの人気チームである一方、「ファン以外ほぼアンチ」などとも言われたが、メジャーファンにおけるドジャースはそれに近いのかもしれない。
それでも現在は「チームなんて関係なく大谷を応援したい」という日本人が多いのだろう。その思考回路は「大谷翔平=日本代表」に近いのではないか。言わば大谷を世界各国の代表と戦うナショナルチームとみなしているように見える。
試合内容ではなく大谷が見たい
もともと日本人は「自国のリーグ戦やカップ戦はあまり見ないのに、4年に一度のオリンピックやサッカーワールドカップだけは見て熱く語る人が多い」と言われている。同様にバレーボールも「日本代表戦だけは見る」という人がいるため、長年ゴールデンタイムの生中継が続けてられている。
つまり欧米と比べて「国別対抗戦にしか燃えない」という“にわかスポーツファン”が多いと言われているのだが、現在の大谷は1人でそれに匹敵する存在になっていることの証しなのかもしれない。
だからなのかネット上には、ドジャースが勝とうがカブスが勝とうが大きな問題ではなく、「いかに大谷が活躍するか」という観点で見ているような声が目立つ。「スポーツやチーム戦の醍醐味そっちのけで大谷ばかりに注目する」というスタンスにモヤモヤを感じてしまう人がいるのも無理はないだろう。
そんな“にわかまる出し”ではしゃぐ人々の姿が、昨秋のワールドシリーズ期間を上回るモヤモヤのもとになっている。
「昨日、大谷見た?」なんて話している人が、「大谷以外の野手を知らない」「日本人以外のプレーは“ながら見”」「試合結果を覚えていない」などの様子に、にわかではない人たちが辟易とするのも当然かもしれない。