「40代で失明」というケースは珍しくない
ここで、私が以前診察した40代の患者さんの話をしましょう。
ある日突然、患者さんの眼球の内部に出血が起こり、視力が0.1以下まで急速に低下し、当院を受診されました。そして精密検査の結果、糖尿病網膜症を発症しており、同時に糖尿病を患っていたこともわかりました。本人もその事実を知らず、内科で治療を受けていなかったので、入院と目の緊急手術を行い、幸いにも視力を1.0まで回復させることができました。40代で失明の危機に直面したという経験は、その患者さんにとって大きな衝撃だったと思います。
しかし、こうしたケースは決して珍しいことではありません。この患者さんは失明せずに済みましたが、どんなに医師が手を施しても、残念ながら視力が回復しないことも多くあります。失明率の高い病気が治療の手遅れになりやすいことは、眼科医療において極めて重要な問題です。
一方、医療技術の進歩によって、目の病気の治療成績は着実に向上しています。
たとえば2015~2019年の4年間で、緑内障による失明の割合が28.6%から40.7%に増加したのは、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性の治療法の進歩により、これらの病気による失明が減少したためと考えられます。
さらに、AIを活用した画像診断など最新技術の導入も進んでいます。シンガポールなどではすでに実用化されており、日本でも研究が進められています。これにより、早期発見・早期治療の精度が飛躍的に向上することが期待されています。