スクリーニングのポイントは何か。
「一般の人材紹介業の場合、年齢と学歴の2つが見るべきポイントとされますが、弊社がシングルマザーを紹介する場合でも、そして今回の試みでも、まったく違います。経験も、あまり関係ありません。何のために、どんな仕事を志望するのか、なぜリーダーになりたいのか、そこがポイント。それをA4 1枚に作文していただき、さらに面談で、そこをじっくり探らせていただきました」(福井氏)
そうやって選ばれた女性たちに、月曜から金曜の計5日間、朝9時から夕方6時まで、都内でリーダーシップ研修が施された。講師の話を一方的に聞くだけの座学形式ではなく、グループワークやロールプレイングがふんだんに取り入れられた実践型だ。リーダーとしての自己認識を深めたうえで、コーチングやコミュニケーション力、プレゼンテーション力の向上を狙う。講師は、内外で、女性リーダーシップ研修やダイバーシティ経営セミナーを多数手がける2人のイギリス人女性だ。
初日、参加者それぞれが自己紹介も兼ねて行ったスピーチをビデオで撮影した。何人かは、その映像を見せられ、ショックのあまり絶句したそうだが、そういう人も最終日には自分のリーダーシップについて皆の前でよどみなく話すことができるようになった。「リーダーシップの型は1つではない。100人のリーダーがいたら、百様あっていい」。研修ではこれが何度も強調される。
15年近く勤務した証券会社を先月、退職したばかりの40代前半の受講生に話を聞くことができた。退職理由は理不尽な転勤命令。営業のエース人材の1人として、かなりの成績を維持しつつ、数人の部下ももつ管理職として頑張っていたが、支店長とソリが合わず、いきなり見知らぬ遠方への転勤を命じられた。
「いつもは何か意見すると、『女のくせに出しゃばるな』と言うくせに、こういうときは『あなたは総合職なんだから、男性社員と同じように、辞令1本で全国どこへでも転勤しなければならない』と。その二枚舌に我慢できませんでした」。この遠方への転勤というのも、女性に管理職になるのを躊躇させる日本企業の慣行の1つだ。
この研修に参加して1番よかったのは何だろうか。そう質問すると、こんな答えが返ってきた。「年上、同年代含め、今まで、この人のようになりたい、と思わせる女性のロールモデルが身の回りにいませんでしたが、これに参加したら、私と同じような意識で頑張っている人たちと出会えた。これが大きいですね。みんなで飲みにも行きましたし、何でも相談できる仲間として、これからも付き合っていきたい」。