「私たちのサービスは、大人のキッザニアだと考えています」

求人側の事情でいえば1つは人手不足だ。たとえばタイミーのクライアント業種は物流(単純・簡易作業)が49%、飲食22%、小売21%と、人手不足業種が90%超を占めている(2024年9月12日、第3四半期決算説明資料)。

加えて業務の繁忙期や忙しい時間帯のときだけ依頼し、人件費コストを節約できるメリットもある。また、求人企業と働き手双方がGood、Badで評価する仕組みがあり、閲覧し、評価の良い人を選別できるメリットもある。なんといってもスポットなので仕事ぶりが気に入らなければ1回で終わりにでき、解雇規制もない点だ。逆に気に入ったら無料で引き抜きもできる。

写真=iStock.com/mapo
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ではどういう人たちがどんな理由で、スポットワークで働きたがるのか。

前出のタイミーの資料によると、まず性別は男性52%、女性48%とほぼ同率である。年代は20代26%、30代20%、40代24%、50代20%、60代以上5%と、若者だけではなく中高年層まで幅広い。

また、属性は正社員20%、パート・アルバイト・契約/派遣社員など非正規社員が34%、学生15%、自営業・フリーランス10%、その他21%となっている。

正社員の場合は副業ということになるが、パート・アルバイトも正業を持ちながら副業しており、あらゆる雇用形態の人たちがスポットワークで働いていることがわかる。

もちろん働いて少しでも収入を得たいからであろうが、スポットワークという働き方を選んだ理由については……。

「自分の都合の良い時間に働きたいから」58.7%
「家計の補助・学費等を得たいから」20.7%
「家事・育児・介護等と両立しやすいから」7.8%

となっている(タイミー「スポットワーカーを対象にしたアンケート調査」2024年9月9日)。

まさに隙間時間を有効に活用できるというタイパがよいというメリットもある。それだけではなく、仕事先がアプリ上でスピーディに決まり、履歴書の提出や面接などの余計な手間も省かれる。

さらに、求人企業と同様に利用者の評価やコメントが閲覧できるので仕事先とのミスマッチも防げるし、気に入らないと思えば1日で辞められるのもメリットかもしれない。

そして最大のメリットは給与の即日払いだろう。本来は「月末締め、翌月○日払い」というのが一般的だが、求人企業に代わってスポットワーク事業者が立替え払いしてくれる。

以前、取材した山谷の労働者が「その日働いた給与を握りしめて居酒屋で飲み食いするのが楽しみだ。この仕事は3日やったら辞められない」と言っていたが、同じ“醍醐味”を味わうことができるということだろうか。

SNS上ではこんな書き込みもある。

「興味関心のある仕事を通じて、自分がやりたいことを探せる」
「各職場ではタイミーさん、シェアフルさんと呼ばれることが多く、○○(名前)さんではない環境が逆に新鮮」
「短時間でも異業種を知ることで正社員としてずっと働いていては思いつかないアイデアを生むチャンスになる」

タイミー代表取締役の小川嶺さんはあるインタビューに「私たちのサービスは、大人のキッザニアだと考えています」と答えている。

大人の社会科見学を有償でできるワンダーランドというわけだ。