編集部員が企画に飽きてはいけない
通常、雑誌では、編集者、とりわけ編集長の属人的な感覚によって、特集内容や付録アイテム、表紙の構成などが決まることが多い。いわば“編集者のカン”が頼みだ。ゼクシィでは、そのカンを数値化して言語化。勝ちパターンを明確にして共有することで、安定的な売り上げにつなげたという。
「もちろん、社内では『クリエイティブの領域は、KPIで管理するようなものじゃない』といった声もありました。でも、それでも分析したからこそ見えてきたこともありました。
これまでなんとなく強いと思っていた『ダンドリ&マナー』『結婚の手続き・届け出』などは、分析の結果、確実に売れる鉄板企画であることが再認識できました。そうした企画は、毎号ほぼ新しい読者が手に取ってくれることもあり、数号前とテーマが一緒でも部数に影響はないことが分かりました。
被っているとはいえ、人気企画ということは読者が求めている企画だということ。編集部員には『読者が企画に飽きる前に、私たちが飽きてはいけない』と話しています」
企画趣旨が同じだとしても、中身は世の中の流れや価値観を捉えてアップデートさせている。例えば、ある号での「結婚の手続き・届け出」企画は、法律婚以外の選択を取るカップルもいる前提でパートナーシップ制度のノウハウをメリデメと共に提供している。
また、婚姻届の提出のハウツーには、必ず「2人でどちらの姓を選ぶか話し合う」といった項目を追加している。定番企画のひとつである「彼専用ゼクシィ」も、かつてはいかにうまく花嫁を手助けするか、といった内容だったが、今は2人で一緒にウエディングを楽しむというアプローチに変わってきているという。
決してマンネリではない
「とはいえ編集部員は鉄板企画ばかりつくっているわけではありません。そうした人気企画を行えば、サブの特集でチャレンジングな企画を入れても売り上げは落ちないことも判明しています。多様な結婚やカップル、様々な結婚式のカタチなどの新しい企画もどんどん取り入れる余地があるので、むしろ編集部の士気は上がりました」
2012年から毎号雑誌につくようになった付録も調査対象だ。売り上げにつながる順にランク分けしている。例年よく売れる4月号や12月号などには、確実に売れるエコバッグやポーチなど定番人気の付録をつける。売り上げが落ち着く時期には、新しい付録やブランドとのコラボに挑戦するといったメリハリをつけている。
「実はかつては、付録で売り上げが乱高下したこともあって……。私が付録の担当をしていた時も、失敗をしたこともあります。でも、だからこそしっかりと売り上げにつながる付録をデータで管理しようというモチベーションにもつながりました」