謙虚さを学んでほしかった

ピッチャーが寮のトイレ掃除をするのは同校野球部の伝統だ。それには理由がある。「マウンドはフィールド上で最も高い場所です」と佐々木監督は言う。「そこは舞台と同じです。舞台に立てば、一番の注目を浴びます。誰よりも多くインタビューされ、記事にもなる」

エンゼルスの移籍前から2024年のドジャースでの活躍に至るまで、100点を超える写真とともに振り返る一冊。L.A. Times編、児島修訳『OHTANI’S JOURNEY 大谷翔平 世界一への全軌跡』(サンマーク出版)

だからこそ、監督は投手たちにトイレ掃除をさせることで謙虚さを教えたかったのだ。だが、この役割にはそれ以上の象徴的な意味合いもある。

「良いデパートのトイレはとても綺麗です。良いホテルでも、トイレは重要です」と佐々木監督は言う。「トイレを見れば、その場所の価値、そこにいる人たちがどんな気持ちで仕事に取り組んでいるかがよくわかります。マウンドがグラウンドで最も重要な場所であるのと同じように、トイレはその施設で最も重要な場所なのです。アメリカとは、少し考え方が違うかもしれないですね」

画像=WALLY SKALIJ/ロサンゼルス・タイムズ、『OHTANI`S JOURNEY』より
L.A. Timesは大谷がメジャーに挑戦する前から故郷の奥州市を訪ね、佐々木監督など関係者を取材してきた
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