先人の開発者たちのメンタルの強さ
川岡たちがレストアをやりながら痛感したのは豊田喜一郎たち、かつての開発陣のメンタルの強さだ。
「技術も情報も資源もなかったわけです。当時、他社さんはオースチン、ルノーといった海外メーカーのノックダウン生産をして技術を蓄えていきました。ですが、喜一郎は純国産で車を作ることにした。日本に自動車文化を作ろうと思っていたからです。レストアしながら感じたのは毎日がチャレンジだったこと。技術の開発はすべて初めてのことだったから、チャレンジしてマインドを鍛えていった。僕らがこの仕事を通して感じたのはマインドとメンタルの強さです。
『技能は技術の母、技能無しにして技術の進化なし、ロボットがうまいのではなく、教えた人がうまい、常に人が技能を進化させて技術も進化させるこのスパイラルアップが大事』
河合おやじは毎回、身に染みることを話すんですよ。
前線にいる僕らは百年に一度の危機を感じています。EVの電池、テスラやBYD、グーグル……。自動車会社だけがライバルではない時代です。新しいことをやっていかないと、トヨタはつぶれてしまう。新しいことに挑戦しなくてはいけない環境にいます。今は創業の時と同じ環境だと思うんです。それなのにまだ僕らは喜一郎たちにマインドでは負けている。強いマインドを作っていくためにレストアをやっています」