子どものやりたいようにやらせていいのか

幼い頃から親の愛を独占し、何のルールや制裁もなく、やりたいように育ってきた人が、社会に出てからは成功できない例を、私たちはよく見てきた。逆に貧しい家庭環境で、親が子どもに目をかけてやれず、何の支援もないまま何でも自分で決めて育った場合も、望みの結果を成し遂げられるケースは少ない。どうしてだろうか。

垣根のなかでうまく育つのは、守られているという安心感のおかげでもあり、親が作った枠のなかで限度を理解し、適切な態度と姿勢を学べるからだ。

ルールという垣根、限度という枠がなければ、もっと自由で、創造的で効率的な人間になりそうなものだが、絶対にそうはならない。むしろ家庭で縛りを経験した子どもは、家を出て学校や職場などに行ったとき、自分の属する社会で望むものを手にできる人間に育つのだ。

親がある枠組みやルールを作ったとき、子どもがそれを理解してくれることもあれば、ときには理解してくれないこともある。とにかく従順にそのルールのいい点を受け入れ、習慣として身につけ、いい結果を出すこともある。あるいは、自分の望むものを手にするため親と交渉をしたり、親のしつけを甘受しながら、より多くのことを手に入れたりもする。子どもはその過程で、上の世代とどう話し合うべきか、どうすれば欲しいものが手に入るのかを、自然に学んでいく。社会のなかで望むものを得るための訓練をしているのだ。

また、コミュニケーション能力も向上するし、相手の意見を聞いて説得する技術も上達する。つまり、このような能力は生まれつきのものと言うより、親から学ぶ後天的な能力だと言える。

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親が明確に基準を決める

では、何を基準に線を引けばいいのだろうか。明確な限度をどう決めるべきなのか。

まず、親がしっかり考えるべきだ。親としての権威を賢く使い、はっきりした線を決めよう。そして、それを決めたら責任感を持たねばならない。子どもの成長のために重要だからだ。そうやって決めた基準を子どもに説明するときは、それが子どもの幸せを考えてのことであると伝えるべきだ。

他人に配慮でき、礼儀正しく、道徳的な子を育てる道のりは、決して簡単ではない。しかし、それはすべての親ができることであり、親にとってこれほど重要でやりがいのあることはないだろう。