子どもにとって一番かわいそうなこと
恵まれて欠乏を知らずに育った子にとって一番かわいそうなのは、欲望を抑えられずに成長し、自分で満足することができなくなることだ。
自然主義的教育の思想家ルソーは、著書『エミール』で「子どもを不幸にする一番確実な方法は、いつでも何でも手に入れられるようにしてやることだ」と述べた。
簡単に欲望が満たされる子どもは、欲しいものがどんどん増えていくばかりで、見るものすべてが欲しくなる人間になってしまう。すると最終的にどうなってしまうのか。
親がしてやれることには限界がある。いつかは子どもの要求を断らないといけなくなるだろう。ところが、断られることに慣れていない子どもは、欲しいものが手に入らなかったことよりも、断られたという事実によって苦しむことになる。
親が神様でもない限り、このような要求をどうやって満たしてやれるのかとルソーは言う。
欠乏が動機を生む
今の子どもは、欠乏という言葉を知らない。韓国でもアメリカでも、あふれんばかりの豊かさのなかで生きている。だから、自分から何かをしたいという欲が生まれないのだ。
欠乏があってこそ動機が生まれ、動機があると原動力になり、何でも自分の力でやってみようという意志と、努力する気持ちが生まれる。この過程で達成感も味わえる。よって、子どもを育てる際には、ある程度の欠乏が必要だ。
子どものために何をしてあげようかと考えるより、何をしないでおくべきかを考えるほうが賢明だ。私は親として、どうすればやってあげないですむのか、どうすれば子どもに苦労させることができるのかを真剣に考えた。
だから、うちの子どもたちは、私から何かをもらおうとするなら、とても面倒だとわかっている。しっかりと論理立てて母親を説得し、妥協し、同意を得るために努力しないといけなかったからだ。