2人は、2019年に新設した海苔加工場を作業場兼直売所として運営している。美保さんの父・藤原さんが「2人が継いでくれるなら」と、銀行の融資を受けて建てたという。
「大きな投資だったのでは?」と聞くと、邦彦さんは少し肩をすくめ、「船も網も、海苔の機械も消耗品なので、新しくするしかないんです」と答えた。後継者がいない漁師は、子どもたちに借金を負わせたくないからと、商売道具が壊れたら早々に引退することも少なくないという。
「この辺りで同世代の漁師は、数えるほどしかいません。数年後には僕らだけになると思うと、めちゃめちゃ危機感があります。おっきなこと考えても、目の前の人を幸せにできなかったら意味ないなって思うんです。胸上港の漁師や、お義父さんが喜ぶような、漁師の現役寿命を延ばしていけるような環境を作ることが、僕にできることだと思ってます」
家族との時間も、海も、地域も守る働き方を目指して
工場内は「子どもたちの見学ツアーができるように」と、海苔を加工する機械に小窓を作るなどの工夫を施した。「漁師って閉鎖的な部分が多いけど、大変な思いをしながら漁をしたり、海苔を作ったりしてるんだよってことを、地元の子どもたちに伝えたいですね」と美保さんは言う。
漁師のいる玉野市で、子どもたちが地元の資源を学び、大人たちが元気に働く。そして、次なる担い手が育っていく……。「玉野市モデルとして、全国に浸透させたいなって思います」と邦彦さんは言う。
ふと、「ちなみに、今も魚が嫌いなんでしょうか?」と聞くと、邦彦さんはニッと笑った。
「今はめっちゃ好きです。彼女が捌くタイの刺身は絶品なんすよ」