「何を言ってるかわからない人」にならないために
一般的に、街頭演説をすることが多い政治家は一文短く話すことが多いものです。
なかでも小泉純一郎氏、進次郎氏は一文が短く、切れのよい演説に定評があります。私の研究室で分析した小泉純一郎氏のあるスピーチが、一文の長さが34文字であったことと比較しても、柳井氏の一文の短さ(およそ24.5字)は際立っているといえるでしょう。
一文が長い文章は、ピントがボケてしまいます。そのため聞き手にも、最悪の場合は話をしている本人も何を言いたいのかわからなくなってしまいます。一文が短い文章は、伝えたいことが明確になります。歯切れがよく力強い印象を与えます。
柳井氏のメッセージがどれくらい短く、力強く伝わるか、引き続き入社式の具体例をみてみましょう。
店の収益が上がってみんながもっと良い収入を得られる。(25文字)
より良い社会になる。(9文字)
そのために何したらいいのか。(13文字)
自分の頭で考えてください。(12文字)
行動してください。(8文字)
実行ですよ。(5文字)
世界中の店舗で最高のチームを作ってください。(21文字)
自分が最高のチームを作って行かないと誰かが最高のチーム作ってくれることはないですからね。(43文字)
自分から作っていく。(9文字)
それをお願いします。(9文字)
私たちのファンを増やしてください。(16文字)
そういう仕事を期待します。(12文字)
皆さんの活躍を確信してます。(13文字)
心から楽しみにしてます。(11文字)
読書をするからこそ身につく力
柳井氏がこのように一文短く話すことができるのは、読書家でいらっしゃることと無関係ではないでしょう。口語といわれる「話し言葉」は、ついつい一文が長くなってしまうことが多いものです。とくに、考えながら話すと「~で」「~して」と、どんどん長くなってしまうのが日本語の特徴です。
一方、文語といわれる「書き言葉」は、文章や改まった場面で使われる言葉です。主語に対して述語が合っていない主術のねじれを起こさないためにも一文を短くまとめられています。
そのため、口語でも一文を短く話せるようになりたい場合は、たくさんの文章を読むとよいでしょう。とくに書籍を声に出してよむ音読は、自分の身体に短文のリズム感を覚えさせることができるためおススメです。
出典
時事通信映像センター.(2024年3月1日).ノーカット柳井正会長兼社長の新入社員へのメッセージファーストリテイリング.https://www.youtube.com/watch?v=3M4zX7J8q_o