最も伝えたい内容は13文字以内で

一文を短くするほうが伝わりやすくなるのは、話し言葉だけでなく書き言葉も同じです。

ユニクロでは、自社のSDGsに関連した取り組みについてこのような短い日本語で13文字、英語で4語で表現しています。

服のチカラを、社会のチカラに。13文字
THE POWER OF CLOTHING 4語

「よい服をつくり、よい服を売ることで、世界をよい方向へ変えていくことができる」という自社の立場、どのような社会貢献につながるのかというメリットも明確です。一文が短いメッセージの好例です。

日本語の場合、目安は13文字です。NHKでは、私が仕事をさせていただいていた当時は原則として一つのニュースのタイトルは13文字以内とされていました。

その他の放送や映像、新聞やインターネットメディアもタイトルは全角12文字から15文字設定が多くなっています。これらは、表示される画面の横幅による制限でもあります。

せっかく一生懸命に伝えても、相手が内容を覚えていなければ意味がありません。

トップリーダーは、話を聞かせるだけでなく、その内容を相手の記憶に刻み込ませることができます。聞き手がメッセージを覚えられるためにも、短い言葉でまとめる必要があります。「服のチカラを、社会のチカラに。」のように最も伝えたい内容を13文字以内でまとめましょう。

トランプ大統領もやっている

英語の場合、5語以内が理想と言われています。

2024月11月に行われた米大統領選は、拮抗するという予想を大きく裏切りトランプ氏が圧勝。返り咲きを果たしました。

トランプ氏の有名なスローガン「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大に)は4語。今回の選挙戦で彼が立つ演台に掲げられていたキャッチフレーズは「TRUMP WILL FIX IT」(トランプが解決する)4語でした。

ドナルド・トランプ
ドナルド・トランプ(写真= Michael Vadon/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

5語以内とは心理学的にいうと、一度にそれだけしか相手の頭に残らないという長さの限界でもあります。認知心理学では、こうした人が短期間で一度に記憶できる情報量の単位を「チャンク」と呼んでいます。アメリカ・ハーバード大学の心理学者ジョージ・ミラーが提唱した概念です。

ヒトがワーキングメモリで一度に覚えられるチャンク数は7±2つまり5~9が限界だとされています。その後、アメリカ・ミズーリ大学の心理学者ネルソン・コーワン博士は4±1つまり3~5とさらに少ない報告をしています。

ちなみにユニクロの「THE POWER OF CLOTHING」で使われている「THE POWER OF ●●」は、覚えておくと便利なフレーズです。良く使われるキャッチコピーの型のひとつです。

THE POWER OF ●●

あなたが伝えるとしたら●●には何がはいるでしょうか? 自分が一番伝えたいことを●●の中に当てはめてみましょう。こうした短い言葉の型を知っておくことも、「伝わる人」への近道となります。