メキシコから来た男性が「世界唯一」と絶賛

オープンに先駆け、コレクター仲間の女性が2年間住み込みで展示をしてくれた。彼女がリストを制作してくれたおかげで自分のコレクションは60ジャンル、約12万点であると把握することもできた。

B宝館は比類なき博物館だという自負がある。

メキシコからわざわざ飛行機に乗って観に来たという男性は「日本で色々な博物館・美術館を回ったけれど、どこも展示されているモノは金で買い集めたものばかりだ。でもこのミュージアムは、金で買えるものがほとんどない。このミュージアムは世界唯一だ!」と絶賛して、自分が大切にしていたというメキシコプロレスラーのフィギュアを置いて国に帰っていった。

彼の見解は正しい。たとえば昭和を舞台にしたテレビドラマを作るという場合、初期の携帯電話を小道具として使いたいと考えたとする。

しかし、現物はなかなか残っていないのだ。

B宝館には、発売開始以来の携帯電話、ウォークマン、デジタルカメラ、カセットテープ、ラジカセなどの歴代モデルがずらりと並んでいる。もちろん完動品ではなく、見捨てられた中古品だ。

ただ見方を変えれば、B宝館はみんなが捨てたものが山積みになっているだけともいえる。

ゴミ屋敷の100年後、世界遺産への道

テレビ番組で、B宝館の映像をみたタレントのヒロミさんが「ここは綺麗なゴミ屋敷だね」と言うのを聞いて言い得て妙だなと思った。

仮に私がコレクションを身辺整理の対象にしようと考えたとしたら、B宝館に展示されている大半のモノはゴミでしかないのだ。

写真=iStock.com/Briyan Saputra
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何年か前にテレビ番組が鑑定士と弁護士を連れてきて、丸一日かけてB宝館の「全館鑑定」をしたことがある。最終的な鑑定結果は「ゼロ」だった。

さすがにそれはないだろうと食い下がったところ、鑑定士は「中には値のつくものもありますが、大部分の展示品に産業廃棄物の処理費用が掛かるので、全体で言うと実質価値はゼロになってしまうんですよ」と言った。

傍らにいた弁護士がすかさず「相続税がかからなくてよかったじゃないですか」と援護射撃を繰り出したが、私は納得がいかなかった。

ただ、実際に生前整理を進めていくなかで、鑑定士の言っていたことは正しかったのだと思うようになった。

現時点では、B宝館の展示物の全体価値はゼロなのだ。

ただ、「100年経てば、どんなゴミでも宝に変わる」という荒俣宏さんの名言のように、100年後にB宝館は世界遺産に登録されているだろうと私は本気で考えている。