「小さなトラブル」が「企業の不祥事」に

リスク発生時の企業の広報対応においては、

① 問題への対応
② 広報対応(主にメディア対策)

の2つは車の両輪であり、両者を同時対応するのが鉄則だ。

これは従来言われてきたことだが、SNSとネットメディアの普及によって、以前よりも迅速かつ丁寧な対応が求められるようになっている。

以前は、問題が発生しても、深刻な事案でなければメディアが報道しないことも多かったし、メディアが報道するまでにはタイムラグがあり、企業側が対策を立てる時間的な余裕もあった。

現在においては、問題に対して企業側が不適切な対応を取った場合、SNSに投稿する例が増えている。それに触発されて、他のSNSユーザーが相次いで投稿し、「炎上」が起きると、ネットメディア、スポーツ新聞、週刊誌が取り上げ、さらに多くの人々が知ることとなり、炎上が加速していく。

今回のメルカリの例のように、「自分もトラブルに遭った」といったことが次々と投稿されると、収拾がつかなくなり、最終的には企業活動に大きなダメージを及ぼすことになってしまう。

今回のメルカリのトラブルは、この一連のプロセスによって、出品者と落札者のトラブルが、企業と出品者のトラブルに発展、さらに複数顧客とのトラブルが発覚し、「企業の不祥事」として広く認知されるに至った。

メルカリ「対応ミス」が招いた悪循環

この悪循環が止められなかったのは、それぞれのプロセスでのメルカリ側の対応の不手際がある。

1.顧客への対応方針が不完全であったこと
2.顧客への対応が誠実でなかったこと
3.出品者のSNSへの投稿を防げなかったこと
4.メディア対応が不適切だったこと

それぞれの過程について、より詳しく見ていきたい。

1は説明するまでもないのだが、最初にトラブル報告をXに投稿した出品者だけでなく、他の利用者からも相次いで不満が投稿されたことは、企業のクレーム対応の方針に不備があったことは間違いない。

メルカリの「個人間の取引には関与しない」という方針は、これまではリスク回避策であったかもしれないが、詐欺行為が蔓延し始めている現在では、その方針自体がリスクを誘発するに至っている。

今回のトラブル、およびそれに触発されて多くの人が不満を吐露しているトラブルは、真っ当な利用者間の紛争ではなく、詐欺行為によるものである。「個人間の取引には責任は負わない」ということで済まされる問題ではない。

上記のようなことを考えると、サポートを途中で打ち切り、補償をしないという対応を取ったことも悪手だった。「当事者間での解決が不可能」と考えた出品者が、SNSに投稿するに至った。上記の2の対応が、3を招いてしまったのだが、これによって第三者も巻き込んでいく結果となってしまった。

メルカリ側が出品者に対して誠実な対応を取っていれば、ここには至らなかったはずである。

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