なぜ懸垂をもう一度やり直したのか

この1回の懸垂が、0.5キロの体重が、頭を離れなかった。どうしても頭から追い出せず、家に帰る間も、台所のテーブルでグリルチキンと味のないベイクドポテトを食べる間も、悶々としていた。何か手を打たないと、眠れそうにない。俺は車のキーをつかんだ。

「手抜きをしているようじゃ成功できねえぞ」と、俺はジムに戻りながら、自分に活を入れた。「ゴギンズよ、近道なんてものはねえんだ!」

懸垂を一からやり直した。足りなかった1回を埋め合わせるために、250回やった! 同じようなことが何度もあった。腹が減ったから、疲れたからと、ランやスイムで手抜きをしたら、必ず戻って、何倍も自分を追い込んだ。心の中の魔物を抑えつけるには、そうするしかないんだ。

どっちを選んでも、苦しいことに変わりはない。その瞬間の肉体的苦痛に耐えるか、やり損ねた1回の懸垂、1往復ラップのスイム、4分の1マイル(400メートル)のランのせいで、一生に一度のチャンスをふいにするかもしれないという不安に苦しめられるかだ。シールズに関する限り、俺は何事も運任せにするつもりはなかった。

毎日10キロのラン、32キロのバイク、3キロのスイム

ASVABの前夜、BUD/Sまであと4週間の時点で、体重はもう不安材料じゃなくなっていた。98キロまで減量して、かつてないほど俊敏で強靱な体になっていたんだ。毎日6マイル(9.7キロ)のランと20マイル(32キロ)のバイク、2マイル(3.2キロ)のスイムを欠かさなかった。真冬にだよ。

デイビッド・ゴギンズ『CAN’T HURT ME』(サンマーク出版)

俺が一番好きだった「モノン・トレイル」ってコースは、インディアナポリスの街路樹をぬうように走る、歩行者や自転車のための6マイル(9.7キロ)のアスファルトの遊歩道だ。サイクリストに、赤ちゃん連れの親、週末ランナー、シニアたちのいこいの場所だ。

俺はシャルジョからもうネイビーシールズの準備命令をもらっていた。そこにはBUD/Sのフェーズ1(体力錬成訓練)でやるワークアウトが書いてあったから、喜んでその倍をやった。

BUD/Sの訓練生は多くても約190人で、そのうちすべての訓練を突破するのはわずか40人ほどだ。俺はその40人のうちの1人というだけじゃなく、「トップ」になるつもりでいた。

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