共和党の“操り人形”になるおそれも

その理由は、「大統領が職務を遂行できない」とみなされる基準が明確にされていないことに加え、ヴァンス副大統領と閣僚の過半数がトランプ大統領に「ノー」を突きつけるのは容易ではないこと、さらにトランプ大統領が解任要求を受け入れなければ、その判断は議会に委ねられ、トランプ氏を解任するには議会全体の3分の2(上院67人、下院290人)の賛成が必要となり、これもハードルが非常に高いと思えるからである。

そこで考えられるもう1つのシナリオは、トランプ大統領を解任せずに同氏の支持基盤である共和党の保守派が職務不能となった大統領を舞台裏で操りながら、彼らの優先政策を実現していくことである。そのなかには人工妊娠中絶の全面禁止、不法移民の大量強制送還、人種平等推進やLGBTQ(性的少数者)の権利保護政策の撤回などが含まれるだろう。

いずれのシナリオになったとしても、トランプ大統領の任期期間中は民主党の支持者にとっては「暗黒と恐怖の時代」となり、米国社会の対立と分断は一層深まることが予想される。

認知機能検査を受けなければ、年齢制限を設けるべき

米国の大統領は世界で最も強大な強力を持つと言われているが、だからこそ、その人物を選ぶにあたっては慎重でなければならない。

多くの精神衛生の専門家は大統領選の立候補者には年齢制限を設けるか、あるいは高齢の候補者には認知機能検査を受けさせるべきだと考えているようだ。

オバマ元大統領やブッシュ元大統領(ジュニア)の診療を担当した元ホワイトハウス医師のジェフリー・クールマン博士は、「客観的な認知機能検査を受けることに同意しない候補者には年齢の制限を設けるべきだ」と主張している。

「公衆の安全のため、65歳を過ぎたら航空機のパイロットにはなれませんし、57歳を過ぎたらFBI捜査官にはなれません。米国の大統領は自由世界で最も強力な地位にあります」(インディペンデント紙、2024年9月25日)。

それに加えて米国の大統領は「核ボタン」と呼ばれる核兵器の使用権限を持っているのである。

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クールマン博士は9月25日の記事の中で、「トランプ氏に独立した専門家による認知機能検査を実施すれば、機能が低下しているか、認知症が進行しているかについて客観的な画像が得られるだろう」と述べたが、検査は行われなかった。