あえてビック3とは勝負をしない

敗北を認め、トヨタの経営陣は1961年には撤退を決断した。しかし永遠に去ったわけではなかった。アメリカ市場について研究を重ね、現地の消費者の「片づいていないジョブ」を理解したあとで、トヨタはカローラを生み出した。

クレイトン・クリステンセン『イノベーションの経済学』(ハーパーコリンズ・ジャパン)

のちに販売台数が世界一となる車だ。トヨタはビッグ3と競争するのではなく、異なる戦略を取った。

トヨタの“販売の神様”と称された神谷正太郎は、小型車は家庭の2台目、3台目の車として重宝され、ビッグ3とまともにぶつかることはない、と当時の戦略を振り返っている。

トヨタの成功は、他の日本企業にも影響を与えた。日本最大の自動車メーカーであり、現在も世界のトップクラスを維持しているトヨタだけでなく、日産、ホンダ、三菱、スズキ、マツダ等、日本経済の形成に大きく貢献した自動車メーカーがほかにも数多く存在する。

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