それだけではない。公務員の中には、午後2時くらいには仕事が終わって、家に帰ってしまう人も多いのだという。
「朝9時くらいに来て、お昼休みもなしにずっと働くのです」。実質5時間労働。東京での自分の日常を振り返ると、めまいがする。
「幸福」が、社会の発展のものさしとして注目される中、経済成長が幸せに必ずしもつながらないことは皆、気づき始めている。それにしても、あまりにも強烈に違うシチリアの生活に触れて、改めて幸福の方程式について考えざるをえなかった。
ヒントは、シチリアの食生活の中にあるのかもしれない。「搾りたて」だというオリーブオイルは、目が覚めるくらいに美味しかった。高速道路のパーキング・エリアのカフェでさえ、パスタを、客の注文を受けてからフライパンで1つひとつ作り始める。
「食」については、大量生産、大量消費が必ずしも「質」に結びつかない。スロー・フード運動でも指摘されているその「真実」を、シチリア島で改めて目の前に突きつけられた気がした。
地中海に、私たち日本の生活とは異なる原理で動いている人たちの島がある。そして、そのライフスタイルは、なかなかに魅力的である。
シチリア島にはまって、何度も通う人も多いという。低成長からなかなか抜け出せない日本の私たちにとって、大いに気になる「オルタナティブ」な生き方が、シチリアにあった。