食物繊維は摂れば摂るほど健康になるわけではない

高齢者

野菜の素材そのものは、ほかの食材に比べてエネルギーが低くなっています。そのため、野菜ばかりを食べて主食や主菜を食べる量が減ると、炭水化物や脂質、たんぱく質が不足して、からだのエネルギーが足りなくなってしまいます。

特に食が細くなっている高齢者は要注意。野菜だけで満腹にならないよう、主食やおかずもしっかりとるようにしましょう。エネルギー不足を補うには油を上手に使うようにします。煮物やお浸しなどのあっさりした調理だけでなく、一度素揚げしてからお浸しにする、マヨネーズなどオイルが入ったドレッシングを使うなど、油を使った調理法も試してみてください。揚げ物が面倒という場合、フライパンに少し多めに油を入れて、揚げ焼きにしてもいいでしょう。

胃腸が不調なとき

野菜や果物に多く含まれる食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維には脂質や糖の吸収をゆるやかにする作用のほか、便をやわらかくしてくれるはたらきがあります。また、不溶性食物繊維は水分を吸収して膨らみ、便のかさを増やして便秘を改善してくれます。

このように、食物繊維は胃腸の健康維持に役立ちますが、下痢があるときに不溶性食物繊維を多量にとると、下痢の原因によっては症状を悪化させることもあるので注意してください。固く消化が悪い食品、油の多い料理、香辛料などの刺激物も避けましょう。

一方、水溶性食物繊維には整腸作用があるので、下痢と便秘の両方の改善に効果的です。ただし、胃腸が不調なときに野菜を食べるなら、煮物やスープなどで柔らかく調理してから食べるとよいでしょう。果物などを生で食べる場合には、細かく切る、すりおろす、よくかむなどして消化吸収しやすい状態にすると、胃腸の負担を減らせます。

きのこは野菜ではないが、体には良い

きのこは、大型の子実体をつくる菌類の総称です。子実体とは、きのこの「傘」と「ひだ」の部分のこと。日本には、4000~5000種類のきのこが存在しているといわれ、国内で食用とされているのは100種類ほどです。スーパーなどでよく見るのはえのきたけ、しいたけ、ぶなしめじ、なめこ、エリンギ、マッシュルームあたりでしょうか。

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「日本食品標準成分表」では、きのこは野菜類ではなく「きのこ類」となっています。厚労省が掲げる1日350gの野菜にも、きのこはカウントされません。

しかし、きのこはからだにうれしい機能をたくさんもっています。エネルギーが低くて食物繊維が豊富なことはよく知られていますが、野菜・果物全般に多いカリウムや、魚介類や卵黄に多いビタミンDも比較的豊富です。ビタミンDは骨の形成に欠かせない栄養素なので、不足すると骨粗しょう症などのリスクが高まります。血中のビタミンD濃度が高い人ほど、がんにかかりにくいという研究報告(*4)もあります。

ほかにも、リラックス効果があるとされる機能性成分のGABAも含まれ、きのこに含まれるβ-グルカンは免疫細胞のはたらきを活性化させる作用が期待されています。

(注)
(*4)Budhathoki S, Hidaka A, Yamaji T, Sawada N, Tanaka-Mizuno S, Kuchiba A, Charvat H, Goto A, Kojima S, Sudo N, Shimazu T, Sasazuki S, Inoue M, Tsugane S, Iwasaki M; Japan Public Health Center-based Prospective Study Group. (2018) Plasma 25-hydroxyvitamin D concentration and subsequent risk of total and site specific cancers in Japanese population: large case-cohort study within Japan Public Health Center-based Prospective Study cohort. BMJ, 360:k671.