賃上げ減税で雇用増はかる
衆院の解散から、為替は11円以上円安になっている。株は1100円以上も上がった。例えば為替が11円の円安だと日本の国内総生産(GDP)は約3兆円、0.6%くらい上がる。株が上がれば人々のマインドが変わって消費も増え、経営者がデフレ脱却と考えれば設備投資に動く。日銀は、金融緩和がすぐに貸し出し増に結びつくかどうかという間接金融重視の考え方だが、株高や円安で市場の期待を変えることが大事で、最終的に実体経済にプラスになる。
当面は「3本の矢」のうち、金融政策、財政政策が中心だが、10.3兆円の追加経済対策の中身は公共投資は少し多めの実質約5兆円で、景気を押し上げる。成長戦略では、いいアイデアが盛り込まれている。例えば民主党政権では雇用を増やせば減税する策だったが、今回はそれに加え、労働者に対する分配を増やした企業、つまり賃金を上げたときも減税するという、踏み込んだ形で雇用増の政策を取り入れた。さらに、研究開発や投資に対する支援など、企業が拡大均衡型で成長していける対策が盛り込まれている。また、祖父母が孫に対して教育資金をまとめてあげた場合の贈与税の免除という、世代間の所得移転を進める対策も入っている。
今のところ良好なスタートダッシュといっていい。が、参院選後の今後の課題としては、中長期的に経済成長力を高めるために、農業、医療など規制緩和やTPP参加などの構造改革、そして財政規律をどれだけ維持することができるかだろう。
※すべて雑誌掲載当時
1966年生まれ。日本興業銀行調査部などを経て大和総研入社。テレビ東京「WBS」コメンテーター。近著に『消費税が日本を救う』がある。