感情のコントロールができない人は、頭が悪く見えてしまう

にこやかで朗らかな人からは社会性の高さがうかがえると言いました。

逆に言えば、いつも不機嫌でむすっとした人は、それだけで「自分は社会性の低い人間です」と宣言しているようなものだということです。

思い当たることがある人は、今からでも遅くありませんから、自分のネガティブな感情をまき散らして周りの人たちを不快な気持ちにさせるのはやめましょう。自分自身の感情と上手に向き合いながら、穏やかに過ごせるよう心がけてみてください。

感情をコントロールできず、いつも不満げな表情を浮かべている人は、「人間的に未熟な人」という印象を周囲に与えます。

どんなにほかのスキルが優れていたとしても、不機嫌な人は、残念ながら、それだけで幼稚に見えてしまうのです。そして、せっかく優秀なところがあったとしても、その能力すらも過小評価されてしまう……という、なんとももったいないことになってしまいます。結局、不貞腐れた表情をしていることで、自分自身が一番損をするのです。

むやみに不機嫌にならないために大切なことの一つは、これまでにもお話をしてきたように、自分の信念とは相容れない意見や出来事も、「それもそうかもね」と言って受け入れられるような器の大きさを備えることです。

心理学の世界に、「曖昧さ耐性」ということばがあります。これは言葉通り、物事の曖昧なところ、つまりグレーな部分にどれだけ耐えられるかということで、これが高いほど、認知的に成熟しているということになります。

白か黒か、敵か味方か、好きか嫌いか。物事をすべてこういった二択ではっきりさせたがる思考の持ち主は、認知的に成熟しているとは言えません。

そしてこのような人は、「○○以外は認めない」「○○はすべきではない」といった極端な考え方に陥りやすくなるため、どんどん許容範囲が狭まっていきます。また、自分にも相手にも完璧を求めがちなので、結果的に、不機嫌になりやすくなるのです。

一方、いつもご機嫌でいられる人は、この曖昧さ耐性が十分に備わっている人です。

こういう人は、不機嫌な人が「0点か、100点か」でしか物事をジャッジできないでいる状況でも、「まあ、65点とれたからいいよね」「40点だけど、こんなこともあるよね。次回、頑張ればいいか」とサラリと受け止めることができます。

あるいは、白黒思考の人が、「あいつは俺の味方だと思っていたのに裏切られた!」と憤っているような場面でも、「まあ別にあの人は、敵とも味方とも言えないものね」と軽やかに受け流すことができるでしょう。

グレーゾーンを許容できる人は、みだりにカリカリせず、いつも落ち着いているので、結果として周囲に知的な印象を与えます。

和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)

歳をとるということは、さまざまな人と出会い、さまざまな経験を重ねていくということですから、グレーゾーンや人それぞれの事情、人生観を受け入れられる度量が広がっていくということだと思います。

けれどその一方で、感情を司る前頭葉の働きが鈍くなるため、感情のコントロールがしにくくなることがあるのもまた、事実です。

だからこそ、「毎日を意識的に過ごす」ということが必要になるのです。意識して前頭葉の働きを活性化させる、意識して自分の気持ちが明るくなるような考え方を取り入れる、意識して自分が喜びを感じられるようなことをやってみる。そんなふうに、意識的に自分が幸せになれるよう、工夫を施しながら毎日を過ごしてみてください。

「よい気分」は、もちろん自然と湧き上がってくる場合もありますが、意図的につくることができるものです。ご機嫌になるのに必要なのもまた、ちょっとしたテクニックと意欲なのです。

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