「配った分はそっくり回収している」構図に
一見、若い夫婦の手取りが増えているように見えてしまいますが、実態は違います。この年齢帯の夫婦数はそもそもの婚姻減により4割近くも減っています。しかも、減っているのは、かつて結婚ボリューム層だった所得中間層以下の夫婦だけです。いうなれば、所得の高い若者だけが結婚できているため、平均値としての手取りが上昇しているに過ぎません。
単身男女(34歳以下)を見れば、一人当たりの手取り増加分は夫婦より低くなっています。また、単身女性は雇用形態の変化等により手取り>国民負担となっていますが、男性はさして増えていない手取り額と同等、引かれる金額も増えています。
さらに、40歳以上の2人以上世帯を見ると、これも単身男性並みに手取り額が伸びていない上に、それを上回る国民負担額の増加が見られます。これは、この年代において、子どもの年齢が児童手当対象外となったり、2007年当時はあった年少扶養控除の廃止などで税金が増えたりしたこと、何より社会保険料自体がジワジワ増加したことが影響しています。この期間、子育て支援を充実させてきたと政府は言いますが、なんのことはない「配った分はそっくり回収している」のです。
だから若者は結婚を諦めた
手取りがさして増えていないのに、引かれる金額は増えている。なんだか奪われてばかりな気がすると思ってしまうのも仕方ないでしょう。現役世代と高齢者とで心の余裕の差があるのは、この奪われているか否かの心理的な違いが大きいと思います。
欠乏感に支配されてしまうと、多少収入が増えても「また、いつ奪われるかもしれない」と不安が募り、今あるものを減らさないようにという心理になります。それは消費の抑制につながります。独身にとって結婚も子育ても贅沢な消費と化した現代、高価な買い物である婚姻や出生が減るのは必然です。
いや、消費が減ったというより、国民が自主的に選択もしていない強制的な消費だけが増えたというべきでしょう。それは「モノ」でも「コト」でもなく「ゼイ(税)消費」なのです。