出生数改善のラストチャンスはとっくに終了

身も蓋もない話をすれば、90年代からゼロ年代において、「第三次ベビーブーム」が来なかった時点で、今後「出生の山」が形成される可能性は完全についえ、出生数が増加に転じる機会を永遠に失ったと言えます。出生数改善のラストチャンスはまさにこの頃であって、とっくの昔にチャンスは終了しています。

出生数だけではありません。この時期の経済環境の悪化は、若者が結婚しようとする意欲を削ぎ、それが今に続く未婚者の激増へとつながったといっても過言ではありません。もちろん、婚姻減は経済環境の問題だけではありませんが、大きな要因であることだけは確かです。

経済的にある程度のゆとりができ、生活に最低限必要な必需品がそろってこその「コト消費」だったはずですが、手取り額がさほどあがらない中で、多少の児童手当などの給付を受けたところで「もう一人産もう」などとは到底考えられなかったでしょう。

そして、皮肉なことに、児童手当などの現金給付は、新たな出生意欲の喚起よりも、今いる子への投資の充実に振り分けられ、結果教育費など含む子育てコストの高騰を招きました。それが「子ども一人当たり何千万かかる」という言説に結び付き、やがて出産・子育てどころか、結婚することすらお金が必要という「結婚のインフレ」状況を作り出すことになります。

交差点を渡る人々
写真=iStock.com/Wachiwit
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結婚、出産は「贅沢品」になってしまった

デフレという状況下で結婚するためのコスト(結婚相手への経済条件等)だけが上昇したのです。それが現在の、「中間層年収帯の若者が結婚できなくなっている」という現実です。

言い換えれば、以前は人生のひとつの必需消費であった「結婚や出産」が、贅沢品と化して、手に入れたいけどとても手が出せないものに変わってしまったということです。

「モノ」が充足されてこその「コト」であり、必需品が揃わなければ、そんな心の余裕すらなくなってしまうでしょう。

そんなことを裏付ける統計データがあります。

内閣府の「国民生活に関する世論調査」において、「これからは心の豊かさか、まだまだ物の豊かさか」という質問がありますが、それの2007年(少子化担当大臣設置時)と最新の2023年とを男女各年代別で比較してみます。