2007年は「心の豊かさ」が上回っていたが…

2007年においては、男女ともにどの年代も「心の豊かさ」が上回っていますが、年代別では若年層になるほどその差は小さくなります。その年代別の傾向は一緒でも、2023年になると、20代から50代の現役世代はすべて完全に「心より物」が上回る逆転現象となります。

これこそ、現代の現役世代が「心の豊かさなんて贅沢言えるほど、毎日の生活が事足りていない」と感じている証左だと思います。さりとて、生活に必要な物が足りないというものでもないでしょう。ここで想定されている「物の豊かさ」とはまさしく「お金の余裕」なのではないでしょうか。

それは決して絶対的な貧困という話ではなく、それぞれの所得階級に応じて、「頑張って仕事しているのに、なんでこんなに日々の生活においてお金の欠乏感を覚えるのだろう」という思いです。

奪われる金額の多さに絶望する現役世代

その欠乏感の正体とは、「あがらない給料」のせいではなく、「膨らみ続ける国民負担率」の増加にあります。人間は心理的に、もらう金額が変わらない時よりも、奪われる金額が多い時のほうが強い欠乏感を覚えます。しかも、負担増は当然ながら勤労している現役世代に集中します。

別途、総務省の家計調査から、34歳までの男女単身世帯と2人以上世帯の年齢別の手取りと国民負担の増減を、同じ2007年から2023年の期間で見ることとします。

2007年と2023年のそれぞれの「勤め先収入(額面給料)」「社会保障給付(児童手当や年金などの給付金)」と「国民負担額=非消費支出(直接税と社会保険料)」が、それぞれの世帯において年齢別にどれくらい変化したかをグラフ化しました。

ちなみに、単身世帯と比較するために、2人以上の世帯は、大人一人当たりに計算し直しています。

これによれば、34歳までの2人以上世帯は、結婚や第一子を産んだ世帯と考えられますが、その世帯は国民負担増より手取り増が上回っています。