“素人集団”だからいい
2019年以降のブランド改革とともに、300円より高い商品も多数展開するようになった3COINS。価格の自由度が上がったことにより、商品開発の難易度も上昇したものの、作れるものの幅は格段に増えた。
そんな中でいま、3COINSが自信を持って展開しているものの一つが、“香り”の関連商品だ。たとえばアロマディフューザーは500円(税抜)で提供しているが、広報の矢八有香子さんは「フレグランスのブランドと戦えるくらい、商品のクオリティを追求している」と自信を見せる。
3COINSが安さと品質を兼ね備えられる秘訣の一つとして、肥後さんは「担当者が専門家ではないこと」を挙げる。
「もともと担当者は、フレグランスの商品が好きで自分でも集めているような人です。ただし専門家ではないので、業界の常識も知りません。だから『普通はこう作る』といった固定概念を持っておらず、純粋に『もっとこうだったらいいのに』と考え、実現してしまえるんです」
素人の強さの発揮は、香りの商品だけにとどまらない。ほかの商品においても、大手メーカーの製品は総じて多機能・高性能だけれども高価格。対して3COINSでは、徹底して消費者の目線から「この機能は絶対必要だけど、ほかの機能はなくてもいいんじゃないか」と考え、その分の価格を抑える。
「たとえばヒット商品のデバイスバンドでも充電ケーブルだけつけてACアダプタをつけなかったり、スマホポーチでも完全な「防水」ではなく「防滴」にしてみたり。それでも、『安いならそっちのほうがいい』と評価してくださるお客様が案外多いんです」(矢八さん)
それぞれの領域に特化し過ぎない“素人集団”であり続けることが、かえって差別化を生み出していると言える。
インフルエンサーは「有名じゃないほうがいい」
商品開発以外にも従業員の熱量が起点となって成果を上げているのが、「社内インフルエンサー制度」だ。同社は2015年、まず衣料部門にてInstagramを開始。
その流れで2016年、3COINSとしてもInstagramを開始した。試行錯誤を繰り返すうちに、段々とInstagramの投稿が実際の購買行動につながっていくようになっていった。
Instagramの効果を確認したパルグループは、フォロワー数の多さなどが評価にも加算される「社内インフルエンサー制度」を正式に制定。
現在3COINSだけで80人ほどの社内インフルエンサーがおり、総フォロワー数は80万人を超える。3COINS内でのトップインフルエンサーは、実に27万人以上のフォロワーを抱えている。
社内インフルエンサーも、挙手式だ。会社として、効果的な投稿について教える勉強会は実施するものの、投稿内容を厳しく制限することはない。
「上から『こう発信しろ』と強制してしまえば楽しくなくなってしまい、長続きしません。商品開発もそうですが、選ばれるためには結局その人の“個性”が重要なのだと思っています」(肥後さん)
また特徴的なのは、「著名人による発信は求めていない」点だ。矢八さんはその理由を、「著名人による発信はどうしてもPR感が出てしまい、3COINSのユーザーが離れていってしまうから」だと説明する。
あくまで重要なのは「消費者の目線に立てるかどうか」。その思いが商品企画でも社内インフルエンサーでも徹底されている。