「デバイスバンド」は発売と同時に即完
高価格帯の商品開発のきっかけも、ブランド改革に端を発する。広報の矢八有香子さんはこう話す。
「もともと『家電をやりたい』『スマホケースが売れているのだから、それに付随する商品は絶対に売れる』などの意見は社内で根強くありました。
ただ『どうしても300円では実現できない』と諦めていたんです。それがターゲットを変え、『価値あるものを提供できるのであれば、300円じゃなくても良い』と考え方を変えたことで、ようやく実現に漕ぎつけることができたのです」
そして2020年、ワイヤレスイヤホンを発売。価格は1500円(税抜)。市場価格に比べると割安だが、「これは3COINSにとっても相当なチャレンジだった」と肥後さんは振り返る。
それでもこのワイヤレスイヤホンはユーザーに受け入れられ、大ヒット商品となった。さらにこの商品をきっかけに、それまで3COINSにはあまり足を運ばなかった男性客の姿も増えた。そうした影響もあって、2022年に発売を開始した「デバイスバンド」は新型が発売するたびに「即完」している。
“ちょっと幸せ”を実現できなら何をやってもいい
「300円」を店名に掲げているのに、「300円じゃないモノ」を売ることについてはどう思っているのか。
「私たちが掲げているのは、みなさんの“ちょっと幸せ”をお手伝いすること。ブランドの軸を『300円』に置くこと自体は、今後も変わりません。ですが“ちょっと幸せ”を実現できるのであれば、もっと柔軟になってもいいと思うようになりました」(肥後さん)
ターゲットをしっかり定めたことでブランド力は強くなり、300円の枠から飛び出したことでチャレンジできることの幅も広がった。
たとえばコスメはこれまで、「何度もチャレンジしてみたものの、すぐに商品も売り場も変わり、若い子向けだったり大人向けだったりと迷走を繰り返し、惨敗してきました」(矢八さん)
それを改めて「and us」のブランドに統一し、化粧品やスキンケア、美容家電まで一気通貫で展開することで、固定のファンをつかむことに成功した。
またブランド改革の後、売り場を大きく拡充したベビー・キッズ向け商品では、育児中である商品企画担当者の「こんなものがあったら絶対に欲しい」という思いを具現化。リビングに置いていても悪目立ちしない色合いとコストパフォーマンスの高さが、子育て中の家族に支持されている。