日本にとっては「トランプ大統領」がよさそうだが…
まず、有価証券などの売却時に課される「キャピタルゲイン税」の引き上げ率をバイデン政権よりも下げた。また法人税は、現行税率よりは引き上げるものの、当初目標より下げて28%にとどめている。
一方で、中小企業やスタートアップへの税控除やインセンティブを強化。イノベーションを推進し、ハリス氏の地元でもあるシリコンバレーを味方につける作戦だ。この新税制では年収40万ドル(約6000万円)以下の庶民の税は上がらないか、むしろ下がるとしている。
自らを「私はキャピタリスト(資本主義者)」とアピールするハリス氏の政策は経済界にも好評だ。金融最大手のゴールドマン・サックスは、ハリス氏が当選した場合はアメリカの経済成長は期待できるが、トランプ氏なら成長に翳りが出るという見解を発表している。
では、日本と石破政権にとってはどちらが当選したほうがいいのだろうか?
答えは一見トランプ氏に見える。トランプ氏が公約する法人税のさらなる引き下げで株価が上がれば、日本の投資家やアメリカと取引のある金融事業者、大企業にとってはメリットになるだろう。石破氏が打ち出している「賃上げと投資が牽引する成長型経済」との相性も良さそうだ。また中国製品への高い関税により米中の関係が悪化すれば、日本製品の競争力が上がるかもしれない。
関税が日本の輸出産業を鈍化させる恐れ
しかし、前述した通り中国に対する高い関税は、インフレをもたらす可能性があり、その影響が日本に及ぶ可能性は無視できない。自動車、半導体、農業といった輸出産業の収益力を強化したい石破政権の目論みを妨げる恐れがある。
高い関税で世界の貿易が滞れば、サプライチェーンが混乱し、物価が押し上げられることによってさらなるインフレが起こるだろう。結局はすべての国を苦しめることになると、前出のニューヨークタイムスの記事は指摘している。
加えてトランプ氏の経済対策は、再エネ投資の見直しなどで地球環境にマイナスの影響を与えるだけでなく、低所得者やマイノリティを切り捨てるものという批判もある。長期的に見て、世界的にもマイナスという意見が強い。
かといって、対するハリス氏が自由貿易を全面的に支持しているかというと、そういうわけでもない。