プレゼンが全否定されたにもかかわらず、Tは「昼の失敗は夜に挽回すればいいわけですよね?」となぜかのん気だ。次なるアドバイザーは、先輩から可愛がられ後輩からは慕われる、社交性の怪物芸人サバンナ・高橋である。「初めて会う人より、1回お酒を酌み交わしてる人のほうが絶対仕事をやりやすい。“飲み会なくして成功なし”ですね」と哲学を語る男に、盛り上がる飲み会の極意を聞かずにはいられない。
高橋が見守る中、飲み会はスタート。上司から「おい、乾杯の音頭とれ」と指名されるとTはやおら立ち上がり、「えーみなさん。『中高年、犬の散歩で犬が痩せ』と申しまして」と何の前触れもなく、綾小路きみまろインスパイア甚だしい挨拶を語りだした。座が一瞬凍りつくも、そこは大人の呼吸で「まあ、まあ」と杯が重なり穏やかに宴は進む。最初こそ上司や先輩に積極的に酒を注ぐTだったが、酔いが回るにつれ堅物キャラは崩壊。「僕のプレゼンの何が悪いんですか~」と先輩にからむ。高橋の顔がみるみる曇っていく。
「どうもこうも、まず最初が……。乾杯の挨拶で笑いを取りにいって失敗したときのリスクのでかさ。それを考えたらギャンブルに出る必要ないと思うんですよ。指名されたとしても、『わかりました、やりましょか?』という態度だと余計緊張するし、その緊張感も伝わってズブズブのすべり方しますし。だから『ええ?僕ですか!? ……めっちゃ緊張しますやん』の一言でハードル下げるべきでしょうね。あと『乾杯!』は誰よりも大きい声を出して、ひと口目のビールに手をつけた後の一言も大事にしないと。たとえば『カーッ。今日はビールが水みたいに入っていきますねえ!』とか」
ハードルを勝手に高く設定しては棄権と失格を繰り返すTには、耳の痛い指摘である。期待値を下げることは重要で、「『なんか面白いことをやれ』みたいな無茶ブリに対しても『えー!? じゃあモノマネするんで、誰か指定してください』と向こうにフリを委ねましょう。人に言われてやることはだいぶハードルが下がるので、全然できてなくてもまだウケます」の知恵までいただく。