別の進路を検討するも、やっぱり音楽が好きだった

「高校の時は成績も良かったから、改めて成績証明書を貰ってAO入試とかでほかの大学を考えてみてもいいかな……」
「もう藝大は諦めようか……」

高校に入る前は、「東大に行って、弁護士か医師にでもなろうか」なんて考えていた時期もあったので、一度ここで引き返して、音楽ではない道へ進むのもいいんじゃないか――。本気でそう考えて、一度は、留学経験もある知り合いの先生に進路相談に行ったりもしたのです。それでも、どうにもしっくりこない。

そんな“2度目の不登校生活”を送っているうちに、ふとした時に自然と、自分が音楽を聴いていることに気がついたのです。

「……もう1回、チャレンジしてみようかな」
「今度こそ本当にやり切って、もしもダメでも、これを最後の挑戦にしよう」

自分にとって一番悔いのない選択をしようと決めた時、季節はもう夏を過ぎようとしていました。

藝大受験を再び決意した一方で、“三度目の正直”のために英語を勉強することにしました。2年連続で同じ失敗を重ねてしまったので、とうとう観念したのです。週に1回、大手進学塾に通ってセンター試験のための英語の勉強をしました。ただ、それでも4カ月間ほど。どうしても自分的に納得できないこの勉強に耐えられる限界ギリギリが、4カ月だったのです。

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3度目の2次試験は「簡単過ぎる」くらい完璧

翌年1月の3度目のセンター試験。試験後の自己採点では、ボーダーラインと言われている5割を少し超えるくらいの点数。

「良かった、これで受かったな」

2次試験は、まったく問題ありませんでした。問題ないどころか、「簡単過ぎる」と感じるくらい完璧な手応えでした。問題用紙が配られて「始め」の合図で用紙をめくると、見た瞬間に「あ、このパターンね」と出題の意図がわかってしまうのです。

藝大に限らず、入試のような試験では、傾向と対策の勉強を極限まで突き詰めていくと、自然とそんなふうにフォーマットが見えてくるものだと思います。最終試験の面接も、3回目ともなれば慣れたものです。

「去年も受けました? 最終まで来ましたか?」
「はい。去年もここまで来ました!」

教授陣と、そんなやり取りができるくらいでしたから、試験4日間を終えると、「さすがに今度は受かったよね」と思いましたが、合格発表を見に行く当日になると、やはり嫌な記憶がよみがえってきます。

「万が一、これで落ちちゃったら……」

恐る恐る掲示板で、自分の受験番号を探しました。