「いつ症状が出るか…」というストレス

チックによって感じるこうした身体の不快感以外にも、この症状が続くことによって生まれる日常生活での困りごとがたくさんあります。

たとえば、僕のように重度の運動チックを持っている場合、日々の満員電車は地獄以外の何物でもありません。混んでいる電車内で勝手に腕などが動いたら、隣の人にドーンと身体が当たってしまうかもしれません。ひどいときは、気が付いたら、友人の腕や肩をバーンと叩いていたこともありました。

どんなに気を付けていても、チックの衝動が込み上げてきたら、たいていの場合は止められません。

だから、「いつ症状が出てしまうんだろう」と考えると、ドキドキして、電車に乗るだけでもひどいストレスにさらされます。

そのほか、日常生活で困ることの一例は、手がチックの症状で震えてしまうため、きれいに文字が書けないこと。さらに、手を机などに打ち付けてしまうので、文房具を壊してしまうこともしょっちゅうです。

さらに困るのが強迫性障害などの併発症

僕は絵を描くのが趣味で、デジタルで絵を描くペンタブ専用のペンを使っていたのですが、ひどいときは一日二本ほど壊してしまうことがありました。

デジタルペンは安くても2~3千円するので、1週間に5~6千円分くらいペン代に費やすことも……。鉛筆で書けば安く済むのかもしれませんが、鉛筆だとますます芯も折れやすいし、折れた鉛筆を削るのも一苦労なので、デジタルペン以外はなかなか使いづらいのです。

そうした社会生活での不便さのほか、意外と厄介なのが併発症です。

トゥレット症には、チックの症状以外にもなんらかの併発症が含まれることが多いのですが、類にもれず、僕にもADHD(注意欠陥・多動性障害)や強迫性障害などの併発症があります。

特に困るのが、強迫性障害です。これは、やらなくてもよいような行動を、ついやりたくなってしまう衝動のこと。たとえば「鍵を閉めたか、閉めてないかが常に気になってしまう」「ガスの火を消したか、消してないかを何度も確認しに行ってしまう」などが代表的な例です。