「学歴ばかりが立派」という現場の声

創価学会とは基本的に、その絶対的カリスマ・池田大作氏の圧倒的かつ個人的な指導力によって率いられてきた団体である。しかし、そのカリスマが去ったいま、創価学会は明確に、総体革命が生み出したエリートたちによる、賢人政治か貴族制のような指導体制に移行しつつあるように見える。石井啓一氏が初の官僚OBとして公明党代表に就いたのも、その表れなのではないかとも感じられる。

ただ一方、池田大作氏とは別段学歴エリートではなかった人物で、彼は創価学会を「民衆の城」だとし、また学会員たちは池田氏を「庶民の王」と呼んで称えていた。そして創価学会に限らず、戦後に急成長した日本の新宗教とは、高度経済成長期などに都会に出てきた寄る辺のない地方の農家の次男、三男といった人々(言うまでもないが、彼らは非エリート層である)を吸収することで大きくなってきた。

彼らは後期高齢者となった現在でも、熱心な信仰心を持つ“1世信者”として、各教団の基盤をガッチリと形成している。よって総体革命路線から輩出された“創価エリート”たちは、実際の活動現場で一般の学会員たちとすれ違うことも、ままあるという。確かに筆者は、ある若手公明党議員に対し「学歴ばかり立派で、われわれの気持ちがわかっていない」と愚痴る、古参学会員の話を聞いたことがある。

豪快なリーダーから、真面目な役人へ

また総体革命といっても、すでにある“日本国家の機構”のなかに入り込んでいく試みであるわけで、あえて悪い言い方をすれば一種の“寄生虫”であり、“宿主”を倒してしまうような、傍若無人な態度はとれない。

筆者は「私の上司は創価学会員だった」と語る、ある官僚から話を聞いたことがあるのだが、「その上司は非常に物腰丁寧で、部下にも優しく、とにかく周囲との軋轢を引き起こさないよう、常に気を配っていた」との印象を語っていた。

2022年に首相官邸で撮影された山口那津男氏(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

山口那津男氏はとにかく温厚で物静かな性格で知られ、またその甘いマスクもあって、創価学会の重要な実働部隊であった旧・婦人部(現在では「女性部」に改組)の女性会員たちから、一種のアイドル的な人気さえ得ていた存在だった。山口氏は、そうしたキャラクターが評価されて2009年から今年まで公明党代表を務めてきたところのある人物なのだが、それまでの(池田大作氏がそうであったような)“豪放磊落ごうほうらいらくなリーダー”という姿とは違う、ある種の“線の細い優等生”のようなものが、総体革命の申し子たちの一つの典型的な人物像でもあるらしいのだ。

そして公明党のニューリーダーとなった石井啓一氏だが、公明党関係者などに聞いて回ると、「真面目で優秀な人物だが、よくも悪くも“お役人”っぽくて華がない」といった印象を語る向きが多い。彼もまた池田大作氏がそうであったような、破天荒なタイプの人間ではないようだ。