困っている人を助けない首相に「強い国」が作れるか
いずれにせよ、政府がこれまでのような、どんな手荒かつ姑息な手法を用いたところで、この国に住む全員に、一人残らずマイナ保険証を使わせることは、何年いや何十年たっても不可能であることは自明だ。なぜなら、今の政府のやり方は、困っている人や弱い立場にいる人の存在を完全に無視しているからだ。
本当に、全員にマイナ保険証を使わせたいと考えているなら、保険証廃止という困っている人や弱い立場にいる人を、さらに困らせる強硬手段など用いず、ひとり一人に手を差し伸べる優しい政治を実践してはいかがだろうか。
自民党総裁選では「日本を強い国に」との主張を掲げる候補者もいるようだが、今この国のリーダーに求められているのは強さだろうか。「突破力」や「剛腕」と聞くと勇ましくて頼りがいがあると思ってしまいそうだが、そういう人はリーダーとしてふさわしいといえるだろうか。
こういうリーダーにとっては、自分の推し進めたい政策からこぼれ落ちる人たちは、ただの「邪魔者」。自国民であろうと、躊躇なく簡単に切り捨てていくことだろう。
今、困っていない人なら、なかなか気づけないかもしれないが、いつなんどき自分が「困っている人」の側になるかもしれない。その当たり前の想像力だけは、つねに持ち続けていたいものだ。