森喜朗首相は総裁選なしで選ばれたから、総選挙で大敗した

小選挙区制になってから談合で総理総裁を決めたのは小渕恵三首相の病気退陣・死亡というハプニングを受けた森喜朗のみ。案の定、森内閣の総選挙は大敗北を喫します。そのため、大派閥の領袖でありながら額賀福志郎は総裁選に一度も出ていません。三塚博も中選挙区時代に一度出たきりで、小選挙区になってからは永遠の中間派です。逆に派閥の領袖でなくても首相になれます。安倍晋三首相の所属派閥は「細田派」でした。「安倍派」になったのは首相退陣後です。本人亡き後も「安倍派」なのは奇妙としか言いようがありませんが。

少し余談ではありますが、令和3(2021)年の総裁選候補者はある意味で自民党を象徴する顔ぶれでした。最終的に総裁に選ばれた岸田文雄のほか、河野太郎、高市早苗、野田聖子が立候補。高市と野田では、まったく主張が異なります。この二人がどうして同じ党に所属できるのか、誰にも理解できない。

もっとすごいのが立憲民主党で、高市より右も、野田より左もいる。包括政党にもほどがあるというのが我が国の二大政党の問題点でもあります。

トランプにも驚かれた「選挙が多すぎる日本の政治」

昔、アメリカのドナルド・トランプ大統領が「お前の国では毎年選挙があるのか」と聞くと、安倍晋三首相が「そうだ」と答えたとか。事実です。

平成24(2012)年衆議院選挙。自民党政権返り咲き。第二次安倍内閣発足。
平成25(2013)年参議院選挙。長期政権の安定を築く。なのになぜか消費増税。
平成26(2014)年衆議院選挙。消費税再増税の延期を問う。全野党が延期に賛成なのに。
平成27(2015)年自民党総裁選。無投票再選だが、安保法制で1年が暮れた。
平成28(2016)年参議院選挙。再び増税延期の信を問う。
平成29(2017)年衆議院選挙。モリカケスキャンダルがやまず。
平成30(2018)年自民党総裁選。現職総理大臣なのにダブルスコアでしか勝てず。
平成31(2019)年参議院選挙。増税を公約に。
ドナルド・トランプ米国大統領と安倍晋三首相、2017年2月11日(写真=ドナルド・トランプ事務所/PD-USGov-POTUS/Wikimedia Commons

平成27(2015)年は、結果的に無投票でしたが、総裁選を見据えての政局でした。こんなに選挙が忙しくて政治ができるのか。日本は選挙が多すぎます。

日本の総理大臣は、衆議院選挙のほかに総裁選と参議院選挙を気にしなければなりません。憲法上、総理大臣の権限はこれ以上強くしようがないほど強力です。ただし参議院選挙に勝って多数を得たならば。総理大臣は衆議院の首班指名で選ばれますから、衆議院の多数を得ています。しかし、参議院で野党が多数ならば、法案は通らず、総理大臣はやりたいことが何もできません。平成の総理大臣の多くは、参議院で多数を得られずに退陣に追いやられました。