バッテリー輸出も足踏みが続く

統計的にも、スウェーデンからのバッテリー輸出が足踏みしている様子がうかがえる。ユーロスタット(EU統計局)のデータより、スウェーデンによるリチウムイオンバッテリー(ただし非車載用も含む)の輸出数量の動きを確認すると、最新4~6月期は前期比43.6%増の1685トンと好調だったが、ヨーロッパ向けは停滞が顕著だ(図表1)。

EU域内向けに限定すると、4~6月期の輸出数量は740トンと1~3月期の654トンから13.1%増と堅調だったが、過去最高だった2022年10~12月期の828トンには及ばない。英国とノルウェーを加えても、2022年のピーク時の4分の3程度の輸出数量にとどまっている。一方で、この間の輸出単価は、内外の競争激化から低下している。

(注)季節調整はX-13ARIMAで実施した。(出所)ユーロスタットより作成。

非車載用も含まれているとはいえ、スウェーデンのリチウムイオンバッテリーの輸出数量の動きから判断して、ノースボルト社の事業計画がかなり楽観的だった印象は否めない。完成車メーカーがEVの生産計画を軒並み下方修正するのは2024年に入ってからであるため、23年まではEV業界全体がユーフォリアに包まれ、見通しが甘くなったようだ。

資金調達が難しくなったことを受けて、ノースボルト社に対してスウェーデン政府が公的資本を注入し、救済を行うとの観測が広がった。しかしウルフ・クリステション首相は9月16日の会見でこれを全面的に否定、あくまで株主が責任を負うべきであると強調した。同社の不調は、EUにおけるEVバブルが崩壊したことをまさに体現している。

生産補助金でコスト削減を図るEU

もともとEUは、域内市場における競争条件を平等にするため、加盟各国の政府が特定の企業や産業に対して補助金を給付することを固く禁じてきた。しかしEVの基幹パーツである車載用バッテリーに関しては、EVシフトを促す観点から加盟各国による補助金の給付を推奨、その生産のための巨大工場(ギガファクトリー)の設立を後押しした経緯がある。

スウェーデン北東部・シェレフテオにある工場、プレスリリースより

他方でEUは、2024年に入って加盟各国に対して財政再建を要求、この流れを受けて各国政府はカーユーザーへの購入補助金をカットした。つまりEUは、それまでは需給の両面からEVシフトを促してきたわけだが、24年に入って供給サイドだけに支援の対象を絞り、供給コストを引き下げることに注力しようとしたのである。